【9月12日 東方新報】中国では今年、『流浪地球2(英題:The Wandering Earth 2)』などいくつものSF映画作品がSNSで熱い注目を集めている。

 先月上海市で開催された「第3回読客科幻文学賞(Dookbook SF Awards)」表彰式では、「拉普斯的回旋(和訳:ラプラスの旋回)」など金賞三つを含む合計34作品の受賞が発表された。

 審査員を代表して応募作品を講評した復旦大学(Fudan University)中文科の嚴鋒(Yan Feng)教授は、応募した作家たちの驚くべき想像力を激賞、「中国のSFはかつてないほどの熱狂の真っ只中にあり、新世代の創作者たちが共に築き上げた躍動感が表れている」と話した。

 今年の応募作品の中には、人工知能(AI)に関わる題材のものが数多く見られた。AIのリスクへの懸念や警戒をテーマにした作品もあり、AIに対する積極的な期待を表す作品もあり、AIの内核(本質)を温かみのある柔らかなものとして描いたものもあった。

 生成型AI「チャットGPT(Chat GPT)」は文学の創作にとって助けになるのか、それとも足かせになるのか?

 この問題に対して第3回読客科幻文学賞の最終審査委員である嚴鋒教授、北京大学( Peking University)の戴錦華(Dai Jinhua)教授、上海交通大学(Shanghai Jiao Tong University)の江暁原(Jiang Xiaoyuan)客員教授、雑誌「科幻世界」の姚海軍(Yao Haijun)副総編集長の4人が、SF文学の現状と発展の可能性を見すえて討論を行った。

 姚氏は「全ての物事は程よい程度の問題だ。人工知能は確かにいくつかの変化をもたらした。現在使っている本の表紙のデザインは非常に美しく、制作効率も良い。実際に、画家を雇うよりコストも時間も大幅に節約できる」と、人工知能の現実的に役立つ面を評価する。

 厳氏は「チャットGPTがブレインストーミングを助け、執筆素材を見つけ、創造性を解き放ってくれるなら、機械がそういう手助けを即座にしてくれるものなら、われわれはより創造性の高い仕事に集中することができる。なぜなら、われわれ一人ひとりの知識領域は限られているものだから」と人工知能のプラスの面に着目している。

 戴女史がチャットGPTに対して強調するのは、「チャットGPTがコピー不可能なことは、人がある体験を経た後に持つ批判性である」という点だ。人が持つ「批判性」に根差したテーマのものは、チャットGPTが取って代わるのが難しい部分だ。それゆえ彼女は、ある種の決意や勇気、執念が感じられる作品、またある種の追及や探求の姿勢がある作品をより好むという。

 審査委員たちは、人工知能の現実的な機能性とそれを文学作品の創作に利用するメリットを評価しつつ、またそれが人に代わる万能の道具ではないという点にも言及している。(c)東方新報/AFPBB News