【11月5日 AFP】犯罪取り締まりの未来を担うものとして、人工知能(AI)や顔認識ソフトウエアが世界中で注目されている。だが、英国の警察はこうした技術と、警察官が被疑者の顔写真や外見的特徴を記憶する「見当たり捜査」などの伝統的な捜査手法とを連携させる方針だ。

 英国では、人の顔を覚える並外れた記憶力と、特定の人物を識別する能力にたけた専門捜査官を全土に配置している。

 テムズバレー(Thames Valley)警察で内偵捜査を専門とするティナ・ウォレス氏によると、そうした「傑出した能力」を持つのは100人にわずか1人程度だ。同氏のチームは2017年に見当たり捜査官の募集を開始。現在約20人の布陣で捜査に当たっている。

 勤続17年のアレックス・ソーバーン氏もその一人だ。「顔を覚えるのが昔から得意だった。(見当たり捜査官の)試験の告知があったときはこれだと思った」とAFPに語った。

 試験は対象者10人について、10~30歳の間に撮影された写真を見て、ショッピングセンターの人混みの中から見つけ出すという内容だった。「私は全員見つけたが、写真とはかなり違っていた。非常に面白かった」と語った。

 見当たり捜査班は監視カメラの映像を使ってコンピューター上でも作業するが、現場にも駆り出される。

 チャールズ国王(King Charles III)の戴冠式の際、ソーバーン氏はロンドン西郊ウィンザー城(Windsor Castle)の群集監視を担当した。

「王室に執着している人物が来ていないか確認するために派遣された。事前に大勢の画像を見て、彼らがいれば、問題を起こさないよう監視する任務だった。幸運にも何もなかった」

 初の見当たり捜査班をロンドン市警内で立ち上げたマイク・ネビル氏は「コストがかからず、効果的な捜査方法」だと話した。現役を引退した今は「世界をリードする見当たり捜査のプロ」を自負する専門家育成企業「スーパーレコグナイザー・インターナショナル(Super Recognisers International)」を経営している。