【8月31日 AFP】各地で山火事が相次ぐギリシャで、移民が火を付けたと非難する声が上がり、インターネットで反移民感情が広がっている。

 反移民感情の高まりは、トルコと国境を接する東部エブロス(Evros)アレクサンドルポリ(Alexandroupoli)郊外で、パキスタン人とシリア人13人が放火しようとしていた現場を捕まえたと、住民が主張した事件がきっかけとなった。

 住民の1人で、アルバニア移民の男(45)が22日、移民13人がトラックの荷台に閉じ込められている様子をフェイスブック(Facebook)で生配信しながら、この移民たちが火を付けようとしていたところを捕まえたと自慢気に話した。

 この動画に対し、「撮影していないで、こいつらを燃やせ」とコメントしたユーザーもいた。

 男を含む3人が、人種差別に基づいた暴力をあおったとして逮捕された。当局は「自警主義」は許されないと強調している。

 検察は移民らを不法入国と放火未遂で訴追した。

 一方、政府筋は日刊紙カティメリニ(Kathimerini)に対し、これまでの証拠から計画的な放火ではなく、たき火による失火が火災の原因である可能性が高いことが示されていると話した。

 ソーシャルメディアには、放火装置だとして断熱材と木が詰め込まれた車のタイヤ2個の写真が投稿された。

 逮捕された男は、移民がスーパーマーケット近くの林でこの装置に火を着けようとしていた所を止めに入ったと述べている。

 事件をめぐり、極右政党「ギリシャの解決」のキリアコス・ベロポウロス(Kyriakos Velopoulos)党首も移民批判を展開。移民を違法に拘束した男を称賛したことから、政治的な論争へと発展している。

 メディアの誤報も、エブロス住民の移民に対する不信感を深めた。

 地元ニュースサイトは22日、アレクサンドルポリ郊外で移民20人が警察と銃撃戦を繰り広げ、逮捕されたと伝えたが、後に当局は事件自体を否定した。

 テレビ局Openは23日、ロドピ(Rodopi)近郊で移民2人が火を付けたところを拘束されたと報じたが誤りだったと訂正した。

■「破滅させようとしている」

 国境沿い地域の住民の反移民感情は強い。住民は、移民が盗みを働き、密入国あっせん業者が危険運転をするため事故の懸念が高まっていると訴える。

 エブロスに住む男性はAFPに「移民が火を付けたと確信している」と話した。「やつらは私たちを燃やし、盗み、車でひき殺す」

 昨年山火事が発生した国立公園近郊の村、ダディア(Dadia)に住む70歳の男性は「山火事は移民がやったことに間違いない」と話した。

「やつらは昨年も山に火を付けた。やり残したところを燃やそうと今年も戻ってきた。もしかしたら金をもらっているのかもしれない。私たちを破滅させようとしている」

 一連の山火事では20人の死亡が確認されており、このうち19人が不法移民だったとみられている。(c)AFP/Petros KONSTANTINIDIS and Vassilis KYRIAKOULIS in Alexandroupoli