【8月27日 AFP】アルメニア北西部ギュムリ(Gyumri)の税関ターミナルにつながる埃(ほこり)っぽい道路には、中古車を積んだトレーラーが何キロにもわたって連なっている。

 ロシアによるウクライナ侵攻を受け、西側諸国はロシアに対し前例のない規模の制裁を発動。これにより中古車ディーラーにはビジネス機会がもたらされた。

 米国と欧州連合(EU)は車両の対ロシア輸出を禁止したが、アルメニアでは、ロシア向けの乗用車の通関が依然可能だ。

 ディーラーの一人、ロシア・サンクトペテルブルク(Saint Petersburg)出身のヤロスラフ・コルチェンコ(Yaroslav Kolchenko)さんはAFPに、「現在、金持ちのロシア人ですら、米国の中古車はアルメニア経由で輸入したものしか買えなくなった」と語る。

 輸入のプロセスについては、次のように説明した。

 まず「中古車や事故車、低価格車を米国のインターネットオークションで買い付ける」、その後「海路でジョージアの港ポティ(Poti)まで輸送し、そこで修理する。それをアルメニアに運んで通関し、陸路で再びジョージアを経由させてロシアに送る」のだという。

 こうした並行輸出は、一般には法的にグレーな領域とされており、対ロシア制裁の精神にも背くものだ。

■大きいもうけ

 ウクライナや西側諸国は、カフカス地方や中央アジアの旧ソ連諸国がロシアの制裁逃れを支援しているのではないかとの懸念を強めている。

 アルメニアのバハン・ハチャトゥリャン(Vahagn Khachaturyan)大統領は昨年、ロシアは「制裁に耐えることができる」と発言。また同国は「きょうだい」であるとして、経済面での関係強化を推進する考えも示していた。

 ロシアはアルメニアとの間で自由貿易協定を締結しており、輸入関税もアルメニアを通した方が自国よりも大幅に抑えることができる。

 そのような理由から、西側諸国の自動車ディーラーがロシアから撤退した後、米国からロシアへの再輸出拠点としてアルメニアがその存在価値を一気に上げた。

 アンドレイと名乗るコルチェンコさんのビジネスパートナーは、昨年2月の侵攻開始以来、現在のような取引を続けていると話す。

 1万3000米ドル(約190万円)で買い付けた車が、サンクトペテルブルクでは最低2万3000ドル(約335万円)で売れるという。通関費用は約5000ドル(約73万円)だ。

 こうしたビジネスが追い風となり、昨年のアルメニアの対ロシア輸出額は24億ドル(約3500億円)と、前年の2.4倍に拡大した。

 昨年の自動車の対ロシア再輸出は前年比170%増加。今年の第1四半期は、ロシア向けの輸出台数が45万台を超えた。その大半が米国から買い付けたものだ。