【8月22日 AFP】政府は22日、東京電力(TEPCO)福島第1原子力発電所の処理水について、24日にも海洋放出を開始すると決定した。

 2011年の東日本大震災以降、福島第1原発には五輪競技用プールに換算して500杯分以上に相当する134万立方メートルの水がたまっている。

 東京電力は放出前に浄化し、トリチウム以外のすべての放射性物質を除去するとしている。また残留するトリチウムについても、濃度が国の基準値を大きく下回るまで希釈するとしている。

 国際原子力機関(IAEA)は7月、福島第1原発の処理水放出が「人間や環境に与える放射線の影響は無視できる程度」だとする報告書を発表。また22日には声明で、IAEA職員が放出開始を現地で見届け、その後も同原発構内に常駐し「リアルタイムまたはほぼリアルタイムの監視データ」を公表していくと述べた。

 だが、すでに福島県を含む10都県から食品の輸入を禁止している中国は、海洋放出開始決定の発表を厳しく批判。中国外務省の汪文斌(Wang Wenbin)報道官は「海は全人類の共有財産であり、日本が核で汚染された水を恣意(しい)的に投棄する場所ではない」と非難した。

 国際環境NGOグリーンピース(Greenpeace)も同日発表した声明で、世界の海洋環境がすでに多大なストレスに直面している時に、日本政府は「数十年にわたる意図的な放射能汚染」という誤った解決策を選んだと批判した。

 韓国では多くの市民が処理水の海洋放出を警戒し、天然塩の買い占め現象まで起きている。首都ソウルの日本大使館前には22日、数十人が集まって抗議した。参加者の一人は「海を殺す日本政府を糾弾する!」と書かれたカードを掲げていた。デモや抗議集会は今後も予定されている。

 だが、尹錫悦(ユン・ソンニョル、Yoon Suk-yeol)大統領は国内で政治的リスクを冒しながらも、冷え込んでいた日本との関係の改善を求め、放出計画に異議を唱えていない。

 処理水の海洋放出は、本格操業へ向けて動き出していた日本の漁業関係者の懸念も招いている。東日本大震災の津波で弟を亡くしたという福島県新地町の漁師、小野春雄さん(71)は、海洋放出は漁師にとって不利益しかないと語った。(c)AFP/Hiroshi HIYAMA / Natsuko FUKUE