【8月22日 AFP】国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)」は21日、サウジアラビアの国境警備隊が昨年以降、イエメンから越境を試みたエチオピアの不法移民に「雨のように」銃弾を浴びせ、数百人を殺害したとの報告書を公開した。

 サウジ政府筋はこれについて、「事実無根」だと否定している。

 HRWがインタビューしたエチオピア・オロミア(Oromia)州出身の女性(20)は、サウジの国境警備隊が当局に解放されたばかりの移民集団に向かって発砲したと証言した。

「(銃弾が)雨のように降ってきた。思い出すと涙が出る」「ある男性が、両足を撃たれ動けなくなり、助けを求め叫んでいたけれど、みんな自分の命を守るのに必死で助けられなかった」

 HRWの調査員ナディア・ハードマン(Nadia Hardman)氏は声明で「サウジ当局は人里離れた国境地帯で、数百人もの移民・亡命希望者を殺害している」とし、「サウジはイメージ向上のためにゴルフの大会やサッカークラブ、エンターテインメントのイベント誘致に巨額の金を費やしているが、これらの恐ろしい犯罪から注意をそらすべきではない」と強調した。

 サウジの長年の同盟国である米国も「徹底的かつ透明性のある調査」を行うよう求めた。

 米国務省の報道官は、これらの疑惑についてサウジ政府に懸念を表明したとした上で、「サウジ当局には国際法に定められた義務を果たすよう強く求める」と述べた。

 サウジ政府筋はAFPに対し、HRWの主張は「事実無根で、信頼に足る情報源に基づいていない」と述べた。

 国連(UN)のステファン・ドゥジャリク(Stephane Dujarric)事務総長報道官は、HRWの報告書は「非常に憂慮すべきもの」だが、疑惑の真偽を確かめるのは難しいと述べた。

 HRWは、移民の殺害は「幅広く、組織的に」行われていると見られ、人道に対する罪に当たる恐れがあるとしている。

 国連は昨年、サウジ南部とイエメン北部で2022年1~4月に「移民約430人が、サウジの治安部隊による国境を越えた側への砲撃と発砲で殺害された」恐れがあると報告していた。

 HRWによると、サウジ当局に書簡を送付したが、反応はなかった。

 報告書は、イエメンからサウジに入国しようとしたエチオピア人移民38人へのインタビューをはじめ、衛星画像やソーシャルメディア、「他のソースから集めた」動画や画像を基にまとめられた。

 それによると、調査対象者の証言から、砲撃を含む28件の「爆発する武器の使用」があったことが分かった。

 近距離から攻撃されたとする証言もあった。エチオピア人移民に「手足のどこを撃たれたいか」と尋ねた国境警備隊もいたという。

 さらに、レイプの強要や石や鉄棒での殴打があったと証言する人もいた。

 HRWはサウジ政府に対し、移民や亡命希望者に向けて殺傷能力のある武器の使用する政策を撤廃するよう訴えた。また、国連に対しては、今回の件について調査を要請した。(c)AFP