【8月19日 AFP】インドネシア政府が海外で働く家政婦の支援策に力を入れる中、国内で家政婦に対する虐待事件が発覚し、政府の無策に批判の声が上がっている。

 シティ・ホティマさん(24)は昨年、フェイスブック(Facebook)で家政婦の仕事を見つけ、負債を抱えた家族を助けるため中ジャワ(Central Java)州の故郷を後にした。

 ホティマさんは数か月にわたって虐待され、今は足を引きずって歩き、足にはやけどの跡が残る。「自分に起きた事を思い出すたびに頭が痛くなる」とすすり泣きながら語った。

 今回の事件は、インドネシアでは特異な事例ではない。同国では家政婦を守る法律は存在せず、女性が大半を占める400万人以上が虐待を受けかねない危うい立場に置かれている。

 首都ジャカルタ南部に住む雇用主の女(70)は7月、虐待により禁錮4年の判決を受けて収監された。女の夫や娘、他の家政婦に禁錮3年6月の判決が言い渡された。

 ホティマさんは「とても失望している。判決は私の身に起こった事と比べてあまりに軽い。彼らは私と同じような状況を味わうべきだ」と話した。

 ホティマさんはAFPに対し、家政婦として雇われていた際に性的暴行を受けたものの、当初は話すことができなったと語った。警察に相談し、性的暴行で別の訴えを起こすよう勧められたという。

■「差別的な」法律

 家政婦を保護する法案は、ほぼ20年にわたって棚上げ状態になっており、人権活動家らは、政府の消極姿勢を批判している。

 現行の法的枠組みでは、家政婦は労働者として分類されておらず、規制の枠外で働かざるを得ない。

「ホティマさんのケースは初めてではない。政府の対応は常に遅い」と、女性に対する暴力撲滅委員会のディアスリ・ウィアンダニ氏は批判した。

 家政婦に虐待などの危険があることが知られるようになったが、ホティマさんのような地方の女性たちは、貧困により都市に出稼ぎに行かざるを得ない。ホティマさんは「私たちは村でお金を借りていた。他に選択肢はなかった」と語った。