【8月14日 AFP】ノルウェー人登山家クリスティン・ハリラ(Kristin Harila)氏(37)は先月、標高8000メートル以上の世界最高峰14座登頂を史上最速で成し遂げた。だがその途上で、倒れていた別チームのシェルパ(登山ガイド)を見捨てたとして非難が集中。同氏のチームは、瀕死(ひんし)のシェルパを助けるために最善を尽くしたと主張している。

 ハリラ氏は7月27日、世界第2位の高峰K2(ケーツー)を制覇して記録を達成。しかし同日、倒れたパキスタン人シェルパのモハメド・ハッサン(Mohammed Hassan)さん(27)の横を、頂上を目指して通り過ぎる登山者の長い列を捉えた動画が浮上し、登山界で大きな論争が勃発した。

 現地関係者によると、この日は約100人がK2に登頂したという。

 ハリラ氏は10日、インスタグラム(Instagram)に長文を投稿し、自身のチームはハッサンさんのために「できることはすべて行った」と訴えた。

 だが英紙デーリー・メール(Daily Mail)は「『エゴイスト』登山家、瀕死のポーター置き去り K2登頂祝い記念撮影」と見出しを打った。

 ハリラ氏は「殺害予告」さえ受けており、「今広まっているあらゆる誤情報と憎悪」を打ち消すために自ら発信する必要性を感じたと説明した。

 ハリラ氏によると、自身を含むチーム4人は、狭いルート上で1時間半かけてハッサンさんを助けようとした。その後、前方にいたロープ固定チームが救援要請を発信したのを確認し、同氏は他の人々にハッサンさんを託して登山を続行。チームの撮影担当者はハッサンさんに付き添って残り、酸素や湯を提供していたが、他の登山者はただ通り過ぎて行ったという。

「残った人だけでなく下山して来る人も多く、ハッサンさんはあらゆる助けを得て下山できると信じていた」とハリラ氏。だが1時間後には、撮影担当者も「自身の安全のために酸素を確保する」必要があり、その場を離れざるを得なかった。そして下山時に、チームはハッサンさんの死を知った。

■「ベストを尽くした」

 ハリラ氏の話では、遺体を安全に運ぶには少なくとも6人が必要で、同氏の4人のチームでは、ハッサンさんの遺体を下山させることはできなかった。

 ハッサンさんの死は「まさに悲劇であり、家族の方々には心から同情する。ただ、われわれはベストを尽くした」とハリラ氏。同時に、ハッサンさんはダウンウエアも手袋も着用しておらず、「登山に適切な装備ではなかった」とも指摘した。

 登山者は他にも大勢いたにもかかわらず、ソーシャルメディア上ではハリラ氏に厳しい批判が集中。インスタグラムには「あなたの成功は誰の記憶にも残らない。残るのはあなたの残酷さだけ」、「あなたの手はシェルパの血で染まっている」といったコメントが寄せられた。一方で、こうした状況がはらむ危険性に理解を示し、ハリラ氏の行動を擁護するユーザーもいた。(c)AFP