【12月10日 AFP】シンガポール唯一のごみ埋め立て地、セマカウ(Semakau)島には悪臭もハエの大群も存在しない。代わりに出迎えてくれるのは青い海や豊かな緑、野生の生き物だ。

 このエコフレンドリーなごみの島は、シンガポール人口600万人による廃棄物の焼却灰で埋め立てられている。「ごみのエデンの園」とあだ名されるほどのどかだ。

 しかしスペースは限界に達しつつあり、埋め立て可能な年数はあと10年とされる。シンガポール国家環境庁(NEA)の埋め立て地責任者、デズモンド・リー氏は「セマカウをできるだけ長く使い続け、可能ならば2035年以降も延命させることが不可欠だ」とAFPに語った。

■リサイクル率目標70%

 シンガポールで昨年発生した廃棄物は740万トン。うち57%に当たる約420万トンがリサイクルされた。だが、リサイクル率はプラスチックごみでわずか6%、食品廃棄物で18%にとどまっている。

 政府は19年、「ごみゼロ」キャンペーンを開始。30年までに廃棄物全体のリサイクル率を70%まで引き上げ、セマカウへの投棄量を30%削減することを目標にしている。

 米ニューヨーク市とほぼ同面積のシンガポールでは、1990年代初頭に本土の処分場がいっぱいになり、沖合に埋め立て地を建設、99年に操業開始した。

 人口が増加の一途をたどる中、当局は大胆かつ省スペースな解決策を講じる必要があった。そこでリサイクル不可能なごみの処分用に焼却炉が導入され、焼却灰をセマカウに運ぶことになった。

 グリーンピース(Greenpeace)など環境保護団体からは、焼却灰も公害の汚染源となる可能性があるという批判も上がっている。

 だがNEAは、焼却施設には大気放出前のガスの浄化システムが備わっていると説明する。さらに埋め立て地は防水層と海成粘土で補強してあり、汚染があった場合も封じ込めが可能で、定期的に水質検査もしているという。

■エコアイランド

 セマカウ島では太陽光発電施設の建設や、焼却灰の道路資材化など、さまざまな利用計画が挙がっている。

 何年もかけて徐々に埋められた区域は土で覆われ、自然の植物が育っている。マングローブも植林され、緑豊かになった島には野生動物が集まるようになった。

 AFPの取材班が訪れたときは、シロガシラトビのつがいが急降下して魚を捕り、シロハラウミワシが上空を旋回していた。マングローブ林の端ではチドリ科のインドトサカゲリが鳴き、満杯になった埋め立て穴をアジサシが歩いていた。そして淵にヤシの木が並ぶ池では、カイツブリの親子が泳いでいた。(c)AFP