【7月31日 AFP】ウクライナで戦災孤児となったカリーナちゃん(7)は、首都キーウで叔母と暮らしている。「ママとパパのこと、覚えてる。パパとはソーセージを食べた」と思い出を語り、くすくす笑った。「パパとだけね。ママには皿洗いや掃除のお手伝いをした」

 ウクライナ当局によれば、ロシアによる昨年2月の侵攻開始以来、両親を亡くした子どもは9000人以上に上る。戦争体験がトラウマになっている子も多い。

 カリーナちゃんは、侵攻初期に包囲された北部チェルニヒウ(Chernigiv)州に住んでいた。村から車で避難しようとした際、地雷か砲弾かが爆発し、両親は亡くなった。

 窓から放り出されたカリーナちゃんは「脳振とうを起こした」と、叔母のルスラナ・ノセンコさん(22)が説明した。「背中にやけどを負い、濃い青紫色の痕が残っていた。今も完全には治っていない」

 チェルニヒウの病院で治療を受け、退院したカリーナちゃんをノセンコさんが引き取った。「体が無事だったのはとても運が良かったけれど、心の痛手は大きかった」

■不安の中で暮らす孤児たち

 ウクライナでは侵攻前にすでに10万人以上の子どもが孤児院で暮らしていた。欧州大陸ではロシアに次ぐ多さだ。

 当局は現在、多くの戦災孤児を親族や里親の元へ預けるため、金銭的な補助による奨励策を実施している。

 養子縁組も以前よりは容易になっているものの、ノセンコさんにはまだ多くのハードルがある。学生の身で収入がない上、実子も1人いるため、手続きの開始にも至っておらず、カリーナちゃんの後見人という立場を取っている。

 爆発から1か月後、ノセンコさんは再会したカリーナちゃんに両親の死を伝えた。「めいはひどく不安がっていた」。夜中に目を覚まし、すすり泣いていることもあった。

 ウクライナのオレナ・ゼレンスカ(Olena Zelenska)大統領夫人は、戦争の「精神的影響」から子どもたちを守ることが課題になっていると強調する。戦争の恐怖によって「大人と同じように、多くの子どもたちが不安障害に陥っている」からだ。