【7月28日 AFP】1972年に南米アンデス山脈(Andes)で起きた航空機墜落事故の生存者16人の一人、ウルグアイ人のホセ・ルイス・インシアルテ(Jose Luis Inciarte)さんが27日、首都モンテビデオの自宅で亡くなった。75歳。インシアルテさんの友人がAFPに明らかにした。「アンデスの奇跡」とも呼ばれる事故から救出までの様子は、映画『生きてこそ(ALIVE)』などにも描かれている。

 インシアルテさんらアマチュア・ラグビーチームの選手とその家族は1972年10月13日、試合に出場するため航空機でチリに向かっていた。

 航空機の墜落直後は乗員乗客45人のうち33人が生存していた。しかし、墜落現場は標高約3500メートルのアンデス山中で、氷点下30度の寒さの中、一行は食料も避難場所も、防寒具さえもなかった。厳しい環境の中、約70日後に生還したのはわずか16人だった。

 生存者は生き延びるため、亡くなった仲間の遺体を食べざるを得なかった。

 最終的には生存者のうち若者2人、ロベルト・カネッサ(Roberto Canessa)さんとフェルナンド・パラード(Fernando Parrado)さんが10日間、山中をさまよい歩き、ついに川沿いで住民を見つけ、救助を呼ぶことに成功した。

 この救出劇は、ハリウッドによって映画化されたほか、パラードさんによる書籍も出ている。

 カネッサさんは27日、AFPの取材に対し、がんで亡くなったインシアルテさんについて「われわれは友人を失った」とコメント。墜落事故後、最終的に助かった16人のうち「すでに1人亡くなっており、今では14人になった」と述べた。(c)AFP