■体感温度60度

 今年はきついと話すゲネディさんの感覚は間違っていない。国連も7月の第1週が観測史上で最も暑い1週間となったと発表している。しかし、それだけではない。湾岸では湿度も上昇している。

 UAE国立気象機関のアフメド・ハビブ(Ahmed Habib)氏は、「相対湿度の上昇により、すでに高い気温が実際よりもさらに高く感じられる」と話す。「場所によっては体感温度が55度~60度にもなる」

 それは、球部を湿った布で覆った温度計で測定できる。「湿球温度」と呼ばれ、温度計表面の水分が蒸発した時の冷却熱と、周囲から供給される熱の量が平衡した時の温度を示す。

 湾岸地域は、湿球温度がしばしば35度を超える地球上で数少ない場所の一つ。「湿球温度35度」の下では、年齢や健康状態、体力に関係なく、数時間以内に熱ストレスで致命的な結果に陥る恐れがある。いわば、人間の生存における閾値(しきいち)だ。

 専門家は、気候変動の加速により、湾岸の一部も今世紀末までに人が住む環境ではなくなるとしている。

 クウェートの気象学者イッサ・ラマダン(Issa Ramadan)氏は「過去1年間で観測された温度の上昇は著しい」と指摘。「8月20日までの期間、気温の上昇が顕著となる可能性があり、50度もしくはそれ以上となることも考えられる」と語った。