【7月25日 AFP】インドで24日、米理論物理学者ロバート・オッペンハイマー(Robert Oppenheimer)を題材にしたハリウッド(Hollywood)映画『オッペンハイマー(Oppenheimer、原題)』のセックスシーンが、ヒンズー教に対する攻撃だとして非難が巻き起こった。

 インドは、2014年のナレンドラ・モディ(Narendra Modi)氏率いるヒンズー教至上主義政権の発足以来、宗教に対する不寛容が拡大していると批判されている。

 キリアン・マーフィー(Cillian Murphy)が主役を演じる同作は、インドでは21日に封切られた。公開2日間で興行収入が300万ドル(約4億2400万円)を超える人気となっている。

 問題となっているのは、オッペンハイマーとフローレンス・ピュー(Florence Pugh)演じる恋人とのシーン。恋人がヒンズー教の聖典「バガバッド・ギーター(Bhagavad Gita)」を開き、オッペンハイマーに朗読してほしいと頼む。

 それに対してオッペンハイマーは「われは死なり、世界の破壊者なり」と読み上げる。実際には、オッペンハイマーは最初の原爆実験の際にこの言葉を思い起こしていたとされる。

 インドの政府機関、中央情報委員会(CIC)のウダイ・マフルカル(Uday Mahurkar)首席委員は、クリストファー・ノーラン(Christopher Nolan)監督に宛てた書面をツイッター(Twitter)で公開。この中でマフルカル氏は「10億人の寛容なヒンズー教徒の宗教的な思想に対する直接的な攻撃だ」「ヒンズー教徒に戦争を仕掛けているに等しい」と非難し、問題のシーンをカットするよう求めた。

 ツイッターでは「#BoycottOppenheimer(オッペンハイマーをボイコットしよう)」や「#RespectHinduCulture(ヒンズー教文化を尊重しよう)」といったハッシュタグがトレンド入りしている。

 右派過激派団体「世界ヒンズー評議会(VHP)」は同作について、ヒンズー社会に攻撃を仕掛けようとしているとし、同じく問題のシーンのカットを要請している。

 VHPの広報担当者ビノッド・バンサル(Vinod Bansal)氏はAFPの取材に対し「制作者は、感情をひどく傷つけられた世界のヒンズー教徒に謝罪すべきだ」と述べた。(c)AFP