【7月19日 AFP】太平洋で遭難し海上を約2か月漂流した末、メキシコのマグロ漁船によって救助されたオーストラリア人男性と飼い犬が18日、メキシコに到着した。男性は集まった報道陣に、「生きていることに本当に感謝している」と述べた。

 ティム・シャドックさん(54)と愛犬ベラは、4月にメキシコ沿岸のラパス(La Paz)を双胴船で出発。フランス領ポリネシアを目指し、約6000キロを航海する予定だった。だが荒波で船が損壊し、電子機器も故障。広大な太平洋に取り残されてしまった。

 マンサニジョ(Manzanillo)港に到着したシャドックさんは、やせ細り、ひげは伸びていた。乱れた髪を束ね、その上にシャドックさんとベラを救助した漁船を所有する水産会社のロゴ入りの赤い帽子をかぶっていた。

 シャドックさんは「命の恩人の船長と水産会社に、ただただ感謝している」と語った。

■「体調はいい」

 しばらくの間、体調が非常に悪かったが、現在は前よりは良くなっているという。

 漂流中は雨水を飲み、生魚を食べてしのいだ。常にとても空腹を感じた。食料が尽きてからは釣りをした。

 途中で調理器具を無くしたため、「すし」ばっかりたべることになったと冗談を飛ばし、自分がいかにやせ細ってしまったかを説明した。

 シャドックさんは、海上では「何度も何度も何度も、ついていない日があった」が、いい日もあったと語った。一番苦しかったのは「疲労」だった。

「自分の中にある幸せを見つけようとした。海に入って、水中にいることをただ楽しんだ」

 愛犬ベラとはメキシコで出会った。何度か飼ってくれる人を探したがうまくいかず、海の上までついて来たという。「ベラは私よりもずっと勇敢だった」と称賛した。ベラは船に残り、会見には姿を見せなかった。

 今は自宅に戻り、家族や友人と「ただゆっくりと過ごす」のを楽しみにしている。近い将来、再び海に出ることは「多分ない」と認めた。ただ、いつも海に出ていたので、いつまで陸にいるのかは分からないと語った。(c)AFP/Jose OSORIO