【7月12日 AFP】ベラルーシ・マヒリョウ(Mogilev)州ツェリ(Tsel)には、新たに設置された軍の野営地がある。伐採されたばかりの木の匂いが漂うこの野営地は、短命に終わった反乱を起こしたエフゲニー・プリゴジン(Yevgeny Prigozhin)氏が率いるロシア民間軍事会社ワグネル(Wagner)の戦闘員が使用する可能性がある。

 プリゴジン氏とロシア大統領府は、ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ(Alexander Lukashenko)大統領の仲介で、反乱の終結とワグネル戦闘員らのベラルーシへの移住で合意した。

 だが、ルカシェンコ氏は6日、プリゴジン氏とワグネル戦闘員はベラルーシ国内にいないと明らかにした。

 外国メディアを野営地に案内したベラルーシ国防省の顧問、レオニード・カシンスキー(Leonid Kasinsky)氏は「ワグネル戦闘員を捜しているのなら、ここにはいない」と述べた。

 野営地の見学ツアーは、ルカシェンコ氏の外国メディアとの会見の一環。報道規制が厳しい同国でこうした会見はまれだ。

 300張りのテントは約5000人収容できるが、数人の警備員が休憩所として使っている1張りを除きすべて空だった。カシンスキー氏は、テントは秋に予定されている演習のためだとしている。

 ツェリでワグネルの反乱前後、なんらかの施設の建設が始まったことを示す衛星画像が報じられると、ワグネルを受け入れるためではないかとの臆測が広がった。

 ルカシェンコ氏はそれを否定。ただ、ワグネルにはツェリを含め今は使われていない軍の施設の提供を提案したと明らかにした。

 カシンスキー氏は「ここは用意ができているので、(ワグネルに)提供されるかもしれない」と述べた。

■「必要ならそうなるだけ」

 ウクライナや中央アフリカ、シリアをはじめ多くの国で人権侵害行為を行ったとされるワグネル戦闘員が数千人もやってくるかもしれないことについて、ツェリ郊外の町アサポビチ(Asipovichy)の住民の意見は割れている。

 報復を恐れて匿名で取材に応じた女性は「怖い。平和の中で子どもには育ってほしい。私に言えるのはこれだけ」と話した。

 一方、幼稚園勤務のエレナ・ビングリンスカヤさん(45)は「何も心配していない。必要ならくるだろう」とした上で、ワグネル戦闘員の存在が市民を守ってくれるかもしれないと期待を寄せた。

 ルカシェンコ氏が再選を果たした2020年の疑惑の大統領選前、国内の不安定化を企てたとしてワグネル戦闘員約30人が逮捕された。ロシア政府はワグネルとのつながりを認めておらず、謎に包まれた存在だった。

 カシンスキー氏は、ベラルーシが「ワグネルと対立する理由はない」と主張する。だが、ワグネルとロシア政府との合意内容は依然として不透明な部分が多い。

 カシンスキー氏は「最終的な駐留地は、ワグネルとその司令官に委ねられる」と話した。

 映像は7日撮影。(c)AFP/Barbara WOJAZER