【7月9日 AFP】アフガニスタンの首都カブールのとあるレストランでは、羊肉の塊と脂肪を詰め込んだ約200個のティーポットを粘土製のストーブに置き、何時間もかけて煮込んでいる。

 シェフのワヒードさん(45)は「チャイナキ」と呼ばれるラムシチューを極めた最後の職人とされる一人。料理の名は、煮込む時に使うティーポット(現地語で「チャイナック」)に由来する。

 塩とレンズ豆を加えた上からトマト色のソースを注ぎ、秘伝のスパイスで味を調える。「レシピは60年以上前から同じで、父から受け継いだもの。父も祖父から受け継いだ。私は何一つ変えていない」。取材の際、秘伝のレシピが競合店に漏れ伝わらないかと不安がった。

 ワヒードさんは13歳で学校をやめ、父親の経営するレストランの厨房(ちゅうぼう)に出入りするようになった。父親が亡くなり、わずか25歳で店を継いだが、「弟子が師匠に代わることはできない」と謙遜する。

 子どもは10人いるが、誰も後を継ごうとしないので、自分の代で家業は終わるかもしれないと思っている。

 5時間かけて完成したシチューは皿に注がれ、無発酵のアフガニスタンのパンと緑茶とセットで供される。1人前200アフガニ(約320円)だ。

 多くの客は店内の台に座り、あぐらをかいて食べている。15年来の常連で、週に3回は通っているというザビフラさんは「これを食べると、夜まで元気でいられる」と語った。

 長年やってきた質素な店にはこの国の著名人や政治家、そして数少ない外国人たちも訪れる。

 ランチで売り切れとなることが多いが、ワヒードさんはすぐに翌日分の仕込みに取り掛かり、羊の肉を切り分ける。「体力が続く限り、この仕事を続けるつもりだ」

 映像は6月14日撮影。(c)AFP/Estelle EMONET and Aysha SAFI