【7月9日 AFP】世界で最も長い川は、ナイル川(Nile River)かアマゾン川(Amazon River)か──。長年続いてきた論争に終止符を打とうと、南米のジャングルへの遠征が計画されている。

 探検家による国際チームは、太陽光とペダル動力で動くカヌーを使って2024年4月にアマゾン川源流であるペルーのアンデス(Andes)山脈を出発、コロンビアとブラジルを経る約7000キロを旅し、大西洋に注ぐアマゾン河口を目指す。

 プロジェクトのコーディネーターであるブラジルの探検家ユリ・サナダ(Yuri Sanada)氏はAFPに対し、「主な目的はアマゾン川の地図作成や(その周辺生態系の)生物多様性を記録にとどめることだ」と語った。チームはまた、遠征のドキュメンタリー映画制作も予定している。

 過去にアマゾン川全域を旅したのは約10人ほどしかいない。しかし、誰もサナダ氏らのチームのような目的を持ってはいなかったという。

 ギネス世界記録(Guinness World Records)では、世界最長河川の称号はナイル川に与えられている。しかし、ギネスは「どちらが長いのかは単純な測定ではなく定義の問題」との注釈を付けている。

「ブリタニカ百科事典(Encyclopaedia Britannica)」は、ナイル川の長さが6650キロ、ペルー南部のアプリマク川(Apurimac River)源流から計測したアマゾン川の長さが6400キロとしている。

 米国の神経科学者であり探検家のジェームズ・コントス(James Contos)氏は2014年、アマゾン川の源をより遠くのペルー北部マンタロ川(Mantaro River)に位置するとの説を提唱した。

 もしこの説が受け入れられれば、アマゾン川の長さは「地理学者が以前考えていたよりも77キロメートル長くなる」とコントス氏はAFPに説明した。

■いかだ、馬、ソーラーカヌーで

 サナダ氏の遠征隊は、アプリマク川とマンタロ川の両方の源をたどる予定だ。

 コントス氏をガイドとするグループはマンタロ川をいかだで下り、もう一方のグループはアプリマク川の岸辺をフランスの伝説的な海洋探検家ジャック・クストー(Jacques Cousteau)の孫娘である探検家のセリーヌ・クストー(Celine Cousteau)氏と共に馬で旅する。

 二つの河川が合流する地点で、サナダ氏ら計3人は、ソーラーパネルとペダルで動力を供給する特製のモーターや、距離を計測するセンサーを備えた3隻のカヌーに乗り、アマゾン全域を調査する。

「われわれは、より正確な測定ができる」とサナダ氏。

 ただ、危険も待ち受ける。アナコンダ、アリゲーター、ジャガーが生息する地域を横断するが、最も危険なのは「麻薬密売人と違法鉱業者」と懸念する。

 船室は防弾仕様で、最も危険な地域で武装護衛を確保するために当局と交渉中だ。

 遠征が成功すれば、ナイル川でも同様の試みが行われる可能性があるという。

 サナダ氏は、世界最長の河川に関する論争が決着することはないかもしれないとしながらも、この「競争」がアマゾンの豊かな自然や、気候変動に対する地球の主要な緩衝地帯としてアマゾンを保護する重要性に着目してもらえると手応えを感じている。

「アマゾンを破壊することの結果責任を負うのも、それを保全する責務も、誰もが共有している」と訴えた。(c)AFP/Eugenia LOGIURATTO