【8月6日 AFP】花柄のブラウスとスカートを身に着け、黄色い髪をなびかせた「魔女」とあだ名される遺体──メキシコ中部グアナフアト(Guanajuato)州にあるミイラ博物館には100体以上のミイラが展示されている。

 州都グアナフアト市のヘスス・ボルハ(Jesus Borja)文化局長は「このように展示しようと誰が決めたのか分からないが、何年も前からこうなっている」とAFPに語った。

 だが、市内3か所にあるミイラ博物館は、こうした展示を市の文化遺産の一部と考える人と、非倫理的な商業利用だと見なす人との間で議論を引き起こしている。

 展示されている遺体は1870年から2004年の間に、市営墓地のスペースを空けるために発掘された。親族と連絡の取れなかった遺体が「文化遺産」に指定された。乳児の遺体もある。

 ミイラ博物館は今や年間約60万人が訪れ、約200万ドル(約2億8000万円)の収入をもたらす観光名所となっている。

 論争が激しさを増したのは今年3月、グアナフアトから約350キロ離れた首都メキシコ市での観光フェアに数体のミイラが出展されてからだ。

 メキシコ国立歴史人類学庁(INAH)は、ミイラの一つの画像に白い点が写っていたことから、菌類が繁殖している可能性があると懸念。「このような遺体を移送する前に検査が行われなかったことは憂慮すべきだ」と指摘した。

 グアナフアト州政府は、メキシコ市での展示前に全ミイラの確認をINAHに要請したとしている。一方、ボルハ氏はミイラ遺体の移送には十分注意が払われたと主張している。

 ミイラの展示については、グアナフアト住民の間でも意見が割れている。「自分の親戚が展示されていたら、冒涜(ぼうとく)されているように思う」と観光ガイドのルイス・ガルシアさん(50)は言う。

 一方、元教師のホセフィーナ・レムスさん(69)は、ミイラ化された自分の遺体が展示されても構わないと述べた。「侮辱的だとは思わないし、親族がずっと近くにいることもないだろう」

 INAHではミイラの身元と状態を調査するための委員会を設置している。委員の一人で人類学者のイラン・レボレイロ(Ilan Leboreiro)氏によれば、遺体に脱水作用が起きればミイラ化は自然に起き得る。

 委員会の目的は遺体に尊厳を取り戻すことでもあるとレボレイロ氏は言った。「人間の遺体をこのように扱うのは倫理に反することだ」 (c)AFP/Jennifer Gonzalez Covarrubias