【6月26日 AFP】英国の一族が所有し、約200年にわたり存在を忘れられていた一対の油絵が、オランダ美術の巨匠レンブラント(Rembrandt)の作品であることが判明した。ロンドンで来月、競売に掛けられる。

 レンブラントによる肖像画で個人所有のものは現在、この一対のみとされる。落札価格は500万〜800万ポンド(約9億〜15億円)と予想されている。

 競売大手クリスティーズ(Christie's)の専門家ヘンリー・ペティファー(Henry Pettifer)氏がその重要性に気付くまで、絵は所有者一家の元で「気軽に」飾られていたという。

 同氏は、「作品を初めて目にしたのは数年前、通常の鑑定作業中だったが、体が固まってしまった」と当時を振り返った。「この絵が200年もの間、研究対象になったことがなく、レンブラントに関する資料でも全く言及されていないことに気付き、仰天した」

 クリスティーズは1824年、この2枚の絵をレンブラント作品として競売に掛けていた。現在の所有者の一族が落札し、代々受け継がれてきた。

 同社によると、絵の真贋(しんがん)を見極めるために約2年に及ぶ科学的調査が行われ、その結果、真作と確認された。

 1635年ごろの作品とみられ、レンブラント家の友人で、同じオランダ・ライデン(Leiden)の出身だった高齢の配管工とその妻がモデルとなっている。

 大きさは長辺が約20センチ。富裕層の依頼を受けて大型の肖像画を描いたことで知られるレンブラントの既知の絵画の中では最小で、レンブラントには珍しい親近感のこもった筆致で描かれている。

 クリスティーズが「オールドマスター(西洋絵画の巨匠)部門における近年最大の発見」と形容するこの作品は、オランダ・アムステルダムのほか、米ニューヨークおよび英ロンドンを巡回し、来月6日、ロンドンで行われる競売に出品される。(c)AFP/Danny KEMP