【6月20日 AFP】ウクライナ外務省は19日、ロシアからハンガリーに引き渡されたハンガリー系ウクライナ人捕虜11人との連絡を、ハンガリー政府が妨害していると非難した。ハンガリーは、ウクライナ侵攻開始後もロシアとの関係を維持している。

 ロシア正教会は今月、ハンガリー系少数民族が住むウクライナ西部ザカルパッチャ(Zakarpatska)州出身の捕虜の一行をハンガリーの首都ブダペストに移送したと明かした。同州には、ハンガリー系少数民族約10万人が暮らしている。

 ウクライナ外務省のオレグ・ニコレンコ(Oleg Nikolenko) 報道官はフェイスブック(Facebook)への投稿で、捕虜は隔離されており、「ウクライナの外交官はここ数日、自国民と直接連絡を取るためにあらゆることを試みたがかなわなかった」と主張した。

 ニコレンコ氏によると、捕虜が親族と会話する際には第三者の立ち合いが求められ、ウクライナ大使館に連絡することは許されていないという。同氏は、連絡を取ろうとするウクライナ政府の試みをハンガリーが「無視」していると非難した。

 ハンガリーのグヤーシュ・ゲルゲイ(Gergely Gulyas)首相府長官は捕虜について、「ロシアで解放された後、ロシア正教会が(ハンガリーの)マルタ騎士団(Order of Malta)の慈善団体との協力でハンガリーに移送したため、法的には捕虜と見なされていない」と説明。一行は「自由意思でここに来たという特別な状況に置かれている」とした上で、「自由意思に基づきいつでもこの国を離れられる。われわれは足止めも監視もしない。完全に自由だ」と述べた。

 グヤーシュ氏によると、11人の中にはハンガリー国籍を持たない人もいたが、そうした人には難民資格が与えられたという。

 ザカルパッチャ州の少数民族の権利問題をめぐり、両国政府は長年反目し合っている。ハンガリー側は問題が解消するまで、ウクライナの欧州連合(EU)と北大西洋条約機構(NATO)加盟を承認しないと公言している。(c)AFP