【6月13日 AFP】ベストセラーとなった自伝的エッセー「食べて、祈って、恋をして 女が直面するあらゆること探究の書(Eat, Pray, Love: One Woman's Search for Everything Across Italy, India and Indonesia)」で知られる米作家、エリザベス・ギルバート(Elizabeth Gilbert)氏は12日、ロシアを舞台にした新作について、抗議が殺到したのを受け、出版を中止すると発表した。

 問題の新作は「スノーフォレスト」(The Snow Forest)。1930年代のソ連を舞台に、独裁政権にあらがう一家の物語で、来年初めに出版の予定だった。現在の情勢とはかけ離れているが、書評サイト「グッドリーズ(Goodreads)」には、テーマ選定を問題視するコメントが殺到した。

 星一つの評価を付けたユーザーは「ウクライナ人がロシアのテロリストに命を奪われているのに、著名作家がロシア人に関する本を書き、ろくでなしを美化している」と投稿。「ウクライナでジェノサイド(集団殺害)やエコサイド(大規模環境破壊)を行っているロシアについて書き、美化するのか? 恥を知れ! 失望した!」とのコメントもあった。

 ギルバート氏はインスタグラム(Instagram)に投稿した動画で、「ウクライナ人読者から、現在の状況下で(どんな本であれ、テーマが何であれ)ロシアを舞台にした本を世に出す選択をしたことについて、怒りや悲しみ、失望、苦痛の声を大量に受け取った」と説明。「耐え難い極度の苦痛を味わい、今も逃れられずにいる人々をこれ以上苦しめたくない」として、出版は断念すると語った。

 ロシアによるウクライナ侵攻の影響への対応に苦慮しているのは、出版界だけにとどまらない。

 音楽界では、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場(Metropolitan Opera)が、ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領を支持していたとして、ロシア出身の著名ソプラノ歌手アンナ・ネトレプコ(Anna Netrebko)さんの出演を取りやめた。

 スポーツ界でも、ロシアとベラルーシの選手を対象に、自国を代表しての出場を禁じている大会もある。(c)AFP