【7月2日 AFP】ギリシャのドデカネス(Dodecanese)諸島のカルパトス(Karpathos)島。辺境にあるオリンポス(Olympos)村は、ギリシャでも珍しい家母長制だ。リゴプラ・パブリディスさんは、「ここでは女性が実権を握っている」と話した。

 伝統的な刺しゅうを手掛けるパブリディスさんの工房で、イコン(聖像画)を描いている夫のヤニスさんはその言葉に黙ってうなずいた。

 家父長制が大半を占めるギリシャの他の地域とは対照的に、オリンポスの女性たちは村の生活で指導的な役割を担っている。

 丘の中腹にあるオリンポス村は、16世紀にはオスマン帝国に統治され、20世紀にはイタリアに侵攻されながら、何世紀にもわたる伝統を守り続けてきた。

 郷土史家のヨルゴス・ツァンパナキスさんは、母親の財産を長女が相続するビザンチン帝国時代の相続制度が今も続いていると説明した。

 パブリディスさんも伝統の恩恵を受けた一人で、母親から700本のオリーブの木を受け継いだ。「男性に相続していたら、遺産を使い果たしてしまっていたかもしれない」と話す。

 ギリシャでは伝統的に、結婚後は女性が夫の家で暮らすが、オリンポス村では逆だ。

■母方の名前を受け継ぐ

 女性が優位なのは名前にも表れている。

 ツァンパナキスさんによると、ギリシャの他の地域では長女には父方の祖母の名前が付けられるが、村では母方の祖母の名前が付けられる。「(この村では)多くの女性が今も、夫の姓ではなく、母親の姓で呼び合っている」という。

 村の女性の役割がさらに強まったのは1950年代。男性たちが欧米諸国を中心に出稼ぎに行き始め、妻や娘たちが家族や農場を管理するようになったためだ。