【6月11日 AFP】男子ゴルフ米国ツアー(US PGA Tour)のジェイ・モナハン(Jay Monahan)コミッショナーは、事業統合したLIVゴルフリーグ(LIV Golf League)のサウジアラビアの後援者と法廷闘争を続け、報酬をつり上げて選手の脱出を防ぐだけの資金が米ツアーにはないと話した。米紙ウォールストリート・ジャーナル(Wall Street Journal)が10日に報じた。

 同紙によればコミッショナーは8日、フロリダ州の本部で職員を集め、6000億ドル(約84兆円)の資金を保有すると伝えられるサウジアラビアの政府系基金パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)への挑戦は、金銭面で持続不可能な戦いだと語ったという。

 コミッショナーは職員に「無尽蔵の資金を持つ外国政府とは戦えない」と話し、「可能な限り強い立場で、この取引をまとめられるタイミングを待っていた」と伝えた。また、訴訟費用としてすでに5000万ドル(約70億円)を消費し、さらに新設する「指定大会」や選手へのボーナスの支払い用に予備費から1億ドル(約140億円)を取り崩したと明かしたという。

 LIVは昨年に立ち上げられ、高額報酬を提示して米ツアーの一部のスター選手を引き抜いたが、6日に米ツアーとDPワールドツアー(DP World Tour、欧州ツアー)との事業統合が発表され、法廷闘争もわずか1年で決着した。これにより解消された形だが、争いが続いていれば来年5月に裁判が行われ、そこからさらに長引いていた可能性もあった。

 別の懸念材料として、司法省から反トラスト法(独占禁止法)違反の疑いで捜査対象となっている件もあり、今回の事業統合でツアーに向けられる目はさらに厳しくなるとみられる。

 またモナハン氏は、米ツアーの選手だけでなく、2001年9月11日の米同時多発攻撃にサウジアラビアが関与していたと考える遺族からも偽善者と批判されている。モナハン氏は遺族のことを持ち出して、1年以上もLIVを後援するサウジを批判し、選手の移籍を防ごうとしていた。(c)AFP