【7月2日 AFP】アフガニスタンのイスラム主義組織タリバン(Taliban)の訓練を受けたイスマイル・アシュクラーさん(25)は、同じタンギ渓谷(Tangi Valley)出身の若者のように自爆する機会を逃したことを悔やんでやまない。

 アシュクラーさんはタリバンの下で8年間、政府軍や米国主導の外国軍と戦った末、自爆攻撃を使命とする特殊部隊に入隊。だが、2021年の外国軍撤退、そして欧米が支援していた政権の崩壊により、自爆せずに終わった。

「上官から入隊が決まったと知らされたときには、神に選ばれたのだとうれしかった。ジハード(聖戦)に参加するだけでは満足できなかった。世界中のイスラム教徒、そして自分の心が満たされる作戦を実行しなければと思った」

 結婚したばかりだというアシュクラーさんは、父親とタリバンの情報局員の立ち合いの元、AFPの取材に応じた。

 ここタンギ渓谷の人々は、ジハードの名の下、死へ追いやられた若者たちを誇りにしている。

 イスラム教で使われるアラビア語の「ジハード」という言葉は、個人の精神領域から実際の戦闘まで、宗教的な葛藤や闘争を表現するのに幅広く用いられる。

 だが、タリバンの指導者はイスラム教の厳格な解釈の下、自爆攻撃はジハードの究極の形だと戦闘員たちに教える。

■「骨まで灰に」

 2001年に第1次タリバン政権を追放した米国と北大西洋条約機構(NATO)は、欧米が支援するアフガニスタン新政権を支えるため、タリバンと20年にわたる戦争を繰り広げた。

 東部山岳地帯で2万2000人以上が住むタンギ渓谷はその大半の期間、タリバンの支配下にあり、首都カブールから約70キロの戦略的要衝にあったため、外国軍の標的とされた。

 米軍は09~11年に渓谷を見下ろす基地を占拠し、定期的に夜襲をかけてタリバンの戦闘員を探した。特に女性が隔離されて住む家々を襲撃したことは、アフガニスタン人の間に怒りを生んだ。

 やはり自爆部隊に志願したというアブドゥル・ワハブ・シラジさんは「対抗できる武器がなかったから、自分が爆弾を着けて異教徒がいる場所に侵入し、彼らの顎を砕き、骨まで灰にしてやろうと思った」と語った。

「われわれはアラー(神)の愛のためには、命などどうでもよかった。殉教によって、一刻も早くアラーに近づきたかった」