【6月27日 AFP】故郷を遠く離れ、残してきた家族の身を案じながら、それでもウクライナのウラディスラワ・アレクシーワ(Vladyslava Aleksiiva)とマリナ・アレクシーワ(Maryna Aleksiiva)の双子の姉妹は、2024年パリ五輪でメダルを獲得する夢を諦めていない。

 アーティスティックスイミング(AS)の選手である二人は、2021年の東京五輪でチームの銅メダルを獲得。さらに上を目指してトレーニングに励んでいたとき、ロシアによる母国への侵攻が始まり、ミサイルが降り注ぐ東部ハルキウ(Kharkiv)を脱出しなければならなかった。

 その後はイタリアに滞在し、今ではウクライナへときどき帰国もしながら、国際大会出場のため各地を転戦している。インタビューはW杯出場のため訪れた仏モンペリエ(Montpellier)で行われた。

 今も両親らが攻撃にさらされている中で、練習に集中するのは難しい。「少し不安になった」。マリナがそこまで言って言葉に詰まると、ウラディスラワが後を引き取って「家族はまだウクライナにいるし、離れ離れなのはストレス」と話し、「一緒にいたいけど、私たちはスポーツを通じて、大会で勇敢さを示す必要がある」と続けた。

 モンペリエでは、アイスを味わい、SNSへの投稿も行ったが、心配は尽きない。「きのう母さんに電話をかけたら、空襲警報が鳴っていて、少し不安になった。だけど両親は『大丈夫、心配しないで』と言っていたから、落ち着いて大会に集中するよう努めている」とウラディスラワは言う。

 モンペリエ大会では、女子デュエットのフリールーティン(FR)で優勝。7月には福岡で開催される第20回世界水泳選手権(20th World Aquatics Championships)に出場する予定だ。

 ウクライナで、電気も明かりもない生活を経験した二人にとって、フランスは天国のような環境だった。「(母国は)水もすごく冷たくて。外も冬ならプールの中も冬だった」と振り返るマリナは、「電気がないから髪も乾かせなかった。今は暖かいし電気もあるから少しだけまし」と話し、「だけど電気があることを忘れて、今でも時々携帯電話のライトをつけてしまう」と打ち明けた。