【5月16日 東方新報】日本のアニメ映画『THE FIRST SLAM DUNK』が中国でも大ヒットが続いているが、観客がスマホでスクリーンを撮影し、SNSに投稿することが社会問題となっている。

 中国では1990年代後半にアニメ『SLAM DUNK(スラムダンク)』が各地のテレビ局で放映され、大人気を博した。当時、テレビにかじりついた世代が大人になり、「青春が帰ってきた」と映画館に押し寄せている。4月20日の公開から4日目で観客動員は1000万人を超え、5日目で興行収入は4億元(約78億円)を突破した。映画評価サイト「豆瓣(Douban)」では10点満点の評価で平均9.0点という異例の高評価を得ている。

 しかし、上映中に複数の観客がスマホで画面を撮影する行為が横行。ショート動画をつなぎ合わせた名場面集も投稿され、数千もの「いいね」がついている。「映画館に行かなくともストーリーが分かった」という書き込みもあり、中国メディアは「史上最悪の盗撮被害」と報じている。公開当日、『THE FIRST SLAM DUNK』のSNS「微博(ウェイボー、Weibo)」公式アカウントは「盗撮や不正投稿行為はやめましょう」と呼びかけているが、その効果は少なかったようだ。

 中国ではかつて、映画館にビデオカメラを持ち込んでスクリーンを撮影した海賊版DVDが販売されていたが、市民の消費水準の向上と当局のたび重なる摘発により、そうした海賊版は激減した。しかしここ数年は、スマホで映画を「随手拍(なんとなく撮影)」して、SNSに「随手発(なんとなく投稿)」する行為が広がっている。人気スポットに訪れたことをSNSに投稿する「打卡(Daka=チェックイン)」も流行しており、スラムダンクの映画を見たと投稿することは格好の自慢にもなっているようだ。

 もちろん、こうした盗撮には「著作権侵害行為はやめるべきだ」「映画鑑賞中、スマホの点滅するライトやシャッター音は迷惑」と批判も多い。中国では2017年に映画産業促進法が制定され、「権利者の許可なしに、何人も上映中の映画を撮影・録画してはならない」と明記している。映画館の関係者は「盗撮行為を見つければ注意しており、悪質な場合は退去も求めているが、限界がある。それに、注意ばかりししてると他の観客が作品に集中できなくなる」と打ち明けており、「観客のモラルに期待するしかない」というのが実情だ。(c)東方新報/AFPBB News