【5月16日 AFP】アイルランドの日刊紙アイリッシュ・タイムズ(Irish Times)は14日、人工知能(AI)で作成された意見記事を掲載したことについて、「読者との信頼関係を損なった」と謝罪した。

 問題の記事は12日に掲載されたもので、実在しないエクアドル人作家、アドリアナ・アコスタコルテスの署名入りで投稿された。アイルランド人女性が「フェイクタン」と呼ばれる塗料で肌の色を濃くしているのは文化の盗用だと主張していた。

 同紙のウェブサイトで2番目に多く読まれ、ラジオやSNSで論争を呼ぶ一方、読者からは疑問の声も上がっていた。

 記事は翌13日には削除された。

 この架空の作家名と同じ名前のツイッター(Twitter)アカウントのユーザーは英紙ガーディアン(Guardian)に対し、記事の約80%はチャットGPT(ChatGPT)の最新版「GPT-4」で、プロフィル写真は画像生成ツール「Dalle-E 2」で作成したと明かした。

 このユーザーは、自分たちはアイルランドの大学生で、意見記事を送ったのは、ジェンダーや人種、性的指向など特定のアイデンティティーに基づく集団の利益を追求する政治活動をめぐる極端な言説への議論を起こすためだと語った。「仲間内の受け狙い」もあったという。

 アイリッシュ・タイムズは、「筆者」は「編集部とやりとりし、編集サイドの提案を受け入れ、個人的なエピソードを披露し、関連した研究へのリンクを提供するなどしていた」と説明している。

 今回の一件で編集段階の問題点のみならず「報道機関に対する生成AIによる課題の一つも浮き彫りになった」とした上で、「今後はこうした課題を学び、適応していく」としている。(c)AFP