【4月11日 AFP】南仏の食肉加工場では、キリスト教のイースター(Easter、復活祭)を迎えようとしていた先週、金属音だけが響く中、子羊が列をなして黙々と前進していた。目隠しになっている黒いシートをくぐると、子羊には電気ショックが与えられ気絶させられる。

 三大一神教のキリスト教、イスラム教、ユダヤ教の祭日が重なった今年4月、シストロン(Sisteron)にある国内最大級の羊の食肉処理場はフル稼働で、1時間に350匹を処理していた。

 食肉加工業全体が、動物虐待を訴える活動家による潜入撮影を受け、批判の波にさらされている中、AFP記者は食肉加工施設の取材の機会を得た。

 シストロンは良質な羊肉の産地として名高い。

 生産ラインでは、研ぎ澄まされた刃物で血抜きされた羊が、後ろ足でつるされていた。この最初の精肉工程の10分後には羊は冷蔵庫に入れられる。

 工場長のギヨーム・ガルサン氏は、動物福祉は「道徳的」な義務であり、規制で求められている以上に「細心の注意を払っている」と主張した。

 この施設で処理されている子羊の約4分の1はハラル市場向けだ。ユダヤ教徒向けのコーシャ食品やイスラム教徒向けのハラル食品は、フランスの法律で例外的に認められている殺処理の前に気絶をさせることができないため、動物愛護団体の批判の的になることが多い。

 それでも「25%の利益を諦めるわけにはいかない」とガルサン氏は語った。

■羊たちの列

 トラックから子羊が降ろされる場所には、監視カメラの存在を知らせる掲示板が立っている。過去には動物虐待があったとして文書で警告を受けたこともある。「もうそんなことは起きない」とガルサン氏は言う。

 この施設では殺処理場の中にも監視カメラが導入されている。

 フランス全土の食肉加工施設に監視カメラの設置を義務付けることを呼び掛けた運動は失敗に終わった。近年、流出している食肉処理場の映像はほとんどが動物愛護活動家が潜入撮影したものだ。

 ガルサン氏は口笛を吹き、降ろした10頭の子羊をわらが敷かれた大きなおりへと誘導した。

 10年前は作業員たちが棒を使って家畜を並ばせていたかもしれない。だが、最近は羊を手で押して、狭いコンクリート製の通路に誘導する。その先に処理場がある。

「さあ、行くんだ」とガルサン氏。「一年で最もいい時期とは言えない」とため息をつく。

 子羊の頭部は切り落とされ、別のレールにつるされる。丸ごと1匹、すべての部位が人間の食料や衣服、ペットの餌になる。「最後の最後まで羊を尊重していることは分かってもらえるだろう」とガルサン氏は語った。(c)AFP/Myriam LEMETAYER