【4月5日 AFP】ネコ科で最も大きいアムールトラ(シベリアトラ)も個体によって個性が違うとする研究結果が5日、英国王立協会(Royal Society)のオープンアクセスジャーナル「Royal Society Open Science」に掲載された。

 研究では、絶滅が危惧されるアムールトラ248頭の行動を性格診断テストを通じて観察した。その結果、トラの性格が生殖と生存において成功するかどうかに影響を及ぼしていることが分かった。

 研究論文の共同執筆者であるロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)のロザリンド・アーデン(Rosalind Arden)氏は、AFPの取材に対し「トラは非常に個性的だ。トラの世話をしたり、詳しい人は個体ごとの個性を理解していることが分かった」と述べた。

 研究は、中国で半飼育下にある二つの群れを対象に行われた。人間に使われる性格診断テストを応用。毎日トラに関わっている獣医師と飼育員に、自信、誠実さ、いじめ、残忍性など70項目でトラの性格を評価してもらった。

 二つの群れの結果から、両方の群れに「威厳」と「安定性」という二つの特徴を持つ個体がいることが明らかになった。

「威厳」の評価が高かったトラは他の個体よりも健康的で、多く狩りをし、食事量や交尾の回数も多かった。こうしたトラは、回答した獣医師や飼育員から「群れの中で高い地位にいる」と見られていた。

 一方、協力的で優しいことも、進化の過程においては利点がある。「安定性」が高いトラは他の個体よりも優しく、誠実で、愛情深かった。

 このような性格の違いは、トラの子どもが母親と2~3年という長い期間を過ごすことと関係している可能性がある。

 一方、性別による性格の違いはほとんど見られず、父親トラも子育てに参加していた。

 アーデン氏は「トラとして成功するためには支配的でどう猛で、競争を好み、攻撃的である必要はないということが分かって良かった」と述べた。

 アムールトラは密猟と生息地の喪失によって絶滅の危機にひんしており、野生ではわずか500頭ほどしか残っていない。(c)AFP/Linnea Pedersen