【4月15日 AFP】2018年5月、米首都ワシントンにあるジョンズ・ホプキンス大学(Johns Hopkins University)高等国際関係研究大学院(SAIS)の合格通知を受け取ったブラジル人のビクトル・フェレイラは有頂天になった。「未来をつかんだ。われわれはやったんだ!!!」と同級生にメッセージを送っている。

 だが、フェレイラは普通の学生ではなかった。米国での起訴状によると、フェレイラはロシアのスパイで、本名セルゲイ・チェルカソフ(Sergey Cherkasov)。メッセージを送った同級生とは、チェルカソフのハンドラー(管理官)だった。

 米国の外交、軍事、情報機関関係者の輪に入れるSAIS入学は、チェルカソフの夢だった。入学できれば米国の機密情報のすぐそばまで近づけるからだ。

 ハンドラーへのメッセージには「われわれの勝利だ、兄弟。これで仲間に入れる」と書かれていた。

 チェルカソフは2022年、オランダに本部がある国際刑事裁判所(ICC)にインターンとして潜入しようとして、正体が発覚。ハンドラーへのメッセージなど情報が山と記録されたメモリースティックが押収された。

 近年各国で、ロシアのスパイの摘発が相次いでいる。

 ギリシャ当局は3月、人気編み物用品店のオーナー兼フォトグラファー「マリア・ツァラ」がロシアのスパイで、本名は「イリーナ・S(Irina S)」だったと発表した。

 昨年10月にはノルウェー当局が、トロムセ大学(University of Tromso)でノルウェーの北極関連政策など安保関連問題を教えていたブラジル人の学者をロシアの情報員だったとして逮捕した。

 昨年にはさらに調査報道・検証サイト「ベリングキャット(Bellingcat)」と欧州メディアの共同調査で、イタリアで人気の高級ブランド品販売店を営んでいた自称ペルー人の女性が、ロシア軍参謀本部情報総局(GRU)と繋がりがあることも判明した。店の顧客にはイタリアの北大西洋条約機構(NATO)職員もいた。