【4月16日 AFP】タイ・バンコクのうらびれたショッピングセンターの上階。真夜中になるとリスナーが経験した超自然現象を語る「お化けラジオ(Ghost Radio)」の配信が始まる。

 タイには出産中に死んだ女性のお化け「メーナーク」や、頭部と内臓だけの姿で空を漂う女性のお化け「グラスー」などさまざまなお化けや怪談がある。

 この日の怪談は、女性が震える声で語った。「白いスーツを着た男に時間切れだと言われ、女性はその男について行かざるを得なくなった。ふと後ろを振り返ると、ベッドに自分が寝ているのが見えた」

 スタジオでは、ホストのジャックことワチャラポン・フックジャイディー(Watcharapol Fukjaidee)さん(46)が辛抱強く、詳細を確かめながら話を聞いている。

 ワチャラポンさんは毎週1回、午後11時から夜明け前まで2本のエピソードを配信・収録する。お化けラジオのユーチューブ(YouTube)チャンネルは300万人近くが登録する人気番組で、オンラインで数千コメントが寄せられる。

「技術が発達すると、お化けに会う機会が増える」「お化けはアプリ、チャット、電話を使って接してくる」とワチャラポンさんはAFPに語った。

 その一つとして、遠くに住む友達から連絡がありお寺で待ち合わせをした人の話をしてくれた。

 実際にお寺に行ってみると、「その友人が既に亡くなっていて、ひつぎに携帯電話が入れられていたことが分かった」と、眉をひそめ、いたずらっぽく笑った。

 ワチャラポンさんは20年前、「お化けゴッドファーザー」と呼ばれたカポン・トーンプラップ(Kapol Thongplub)さんの下でブレークした。深夜のリスナー参加番組はバンコクのタクシー運転手に人気を博した。

 現在、ワチャラポンさんの番組はタクシー運転手よりも、フードデリバリーの配達員に人気だ。市内を四六時中走り回ることからお化けとの遭遇率が高いのだ。

 リスナーからの応募に目を通し、政治的な話や、規制が厳しい王室関連の話もよけていくのはスタッフのケムジラーさんだ。

 リスナーは自分たちの話が本当だと信じているとし、「同じ話をしてくる人はほぼいないので、大勢が幽霊に出会っているのだと思う」と話した。

 ワチャラポンさんのスタジオの下の階にあるカフェは、番組の若いファンや家族連れでにぎわっている。

 墓石の形をしたブラウニーを食べていた警察官(25)が、自身の体験談を聞かせてくれた。

 ある家に出動した時、太った男性の影が風呂場に消えて行くのを見た。風呂場のドアはなかなか開かなかったが突然開き、中で死後5時間はたっている大柄な男性の遺体を発見した。「風呂場に消えて行ったのは男性の霊だったのだと分かった」と語り、「幽霊の存在は100%信じている」と続けた。

 ワチャラポンさんは、リスナーは自分の経験した幽霊の話を家族には話せないので似たような考えの人が集まるこの番組に連絡してくるのだと話す。「話している人以外、それが本当だと証明はできない」と言うとニヤリと笑った。(c)AFP/Thanaporn PROMYAMYAI and Rose TROUP BUCHANAN