■すし店開業もジハード諦めず

 イドリブ県反体制派支配地域は現在、国際テロ組織「アルカイダ(Al-Qaeda)」の元シリア支部やその他の武装勢力が合併して設立された「ハイアト・タハリール・アル・シャーム(Hayat Tahrir al-Sham)」の支配下に置かれている。

 内陸に位置するイドリブ県の南側にはシリア政府軍が陣取るものの、北側はトルコ国境に接している。西側の県境からは、地中海まで25キロ足らずだ。

 シャフバノフさんによると、ショウガの甘酢漬け「ガリ」やしょうゆのほかエビやカニまで、材料の多くをトルコから仕入れている。

 イドリブは、2月6日に発生したトルコ・シリア地震の被災地の一つ。両国で計4万5000人以上が死亡したが、シャフバノフさんのレストランは被災を免れた。

 カウンターの後ろでは、同じくロシア出身で元戦闘員2人が生のサーモンやキュウリなどの具材をのりの上に広げた白米に載せて巻きずしを作っていた。

 レストランは当初、生活苦にあえいで日本食にもなじみのない地域で集客に苦労したが、シャフバノフさんは巻きずしを「お手頃」と宣伝している。

 カリフォルニアロールの値段は1本60トルコ・リラ(約400円)。地元住民が食べ慣れている、パンで肉を挟んだシュワルマの倍もする。

 それでも今では常連客が十数人いる。メニューに揚げ物を加えて、さらに増客を目指す考えだ。

 シリア人女性と結婚して2人の娘を持つシャフバノフさんは、反体制武装組織の各派が今後の軍事戦略で合意すれば、レストランよりも戦闘行為を優先させる覚悟ができている。

 シャフバノフさんは「レストランを始めたとはいえ、ジハードを諦めたわけではない」と話した。

 映像は1月に撮影。(c)AFP/Omar Haj Kadour