【3月31日 AFP】オランダの首都アムステルダムで30日、有名な赤線地区「ワレン(Wallen)」を郊外に新設する大規模「エロチックセンター」に移転する計画に反対し、セックスワーカー(性労働者)らがデモを行った。

 顔が分からないようにマスクを着けた数十人のデモ参加者が、赤い傘を差したり、「赤線地区を守れ」と書かれたバナーを掲げたりして市庁舎まで行進し、フェンケ・ハルセマ(Femke Halsema)市長と対峙(たいじ)した。

 アムステルダム当局は、移転は市内での犯罪と迷惑行為を減らすためだとしている。特に泥酔した英国人観光客の存在が問題となっている。

 セックスワーカーのサブリナ・サンチェスさんはAFPに対し「市が押し付けてきた案には全く賛成できない。市はセックスワーカー団体と協議すらしていない」と話した。

 フードをかぶり、サングラスをかけた別のセックスワーカーは、「ドラッグの売人や無礼に振る舞う人をどうにかしてほしい」と、市長に陳情書を読み上げた。

 ハルセマ市長は長年、ワレンに反対する立場をとってきた。移転の理由について「あなたたちではなく、多すぎる観光客や犯罪などが原因だ」と参加者に向かって説明した。

 ワレンはネオンに照らされた飾り窓の中に女性が立ち、客待ちすることで有名。観光客が多数押し寄せ、生活環境が悪化していると近隣住民から長年苦情が出ている。

 市はセックスワーカーが仕事をするための部屋100室と休憩所などを備える「エロチックセンター」を新設する計画を打ち出しており、候補地3か所を選定している。

 だが、候補地の一つが欧州連合(EU)の医薬品規制当局、欧州医薬品庁(EMA)本部の近くだったことから、本部で遅くまで仕事をしている職員の安全に影響するとしてEMAは反発している。

 EMAは新型コロナウイルスワクチンなど医薬品の承認を行う機関。英国のEU離脱により、ロンドンからアムステルダムに移転していた。(c)AFP