【4月2日 AFP】欧州連合(EU)が昆虫食の取り組みを秘密裏に進めようとしているとの誤った情報に、欧州懐疑論者が新たな不安を覚えている。

 EUは先ごろ、より持続可能な栄養源を見つけるための取り組みとして、ヨーロッパイエコオロギやミールワーム(チャイロコメノゴミムシダマシの幼虫)をEU市場向けの食品成分として承認した。これを受け、ソーシャルメディア(SNS)などでは誤解を招くような発言が急増している。

 SNSの投稿では、昆虫を原料とする食品にはラベル表示の必要がないとする誤情報や、こうした食品が多くの病気に関わっているとする根拠のない主張を見ることができる。

 その他にも、EUの承認は、人口削減を企む(たくらむ)世界的エリートの計画が存在することを示すさらなる証拠であり、今回は危険な昆虫を無理やり食べさせる手段に打って出たとする主張もある。

 しかし、デマはオンライン上での拡散にとどまらなかった。

 複数の加盟国では、昆虫食品の承認に反対する政治家からも同様の主張が聞かれる。EUが人々をだまして不気味な昆虫を食べさせようとしている、各国の伝統的食文化に対する攻撃、中には、人々の命を危険にさらす邪悪な計画といった極端な意見もある。

 EU懐疑派の英政治家ナイジェル・ファラージ(Nigel Farage)氏は1月下旬、英国のGBニュース(GB News)に出演した際に「朝食にバッタはいらない!」と不快感を示した。

 ファラージ氏は「食品ラベルには『Acheta Domesticus』と表示されることになる。われわれは、それが何を意味するか、何ら問題なく普通に理解できるだろう」と皮肉を述べた。Acheta Domesticusは、ヨーロッパイエコオロギの学名だ。

 同氏はEUの承認について、英国がEUの食品基準とは一線を画す理由であり、これこそが「適切なブレグジット(英国のEU離脱、Brexit)」だと表現した。

 フランスの保守・共和党のローラン・デュプロン(Laurent Duplomb)上院議員は1月下旬、フランス人は「知らぬ間に昆虫を食べる」ことになり、こうした昆虫由来の原料が「消費者への明確な通知がないまま」食品に含まれることになるだろうと議会で発言した。

 農家でもあるデュプロン氏は「フランスはガストロノミー(美食学)とテロワール(ブドウ畑を取り巻く自然環境要因。ワイン法の基本)の国なのに、バッタやイナゴの仲間であるコオロギを食べるなんて、どうしてこんなことになったんだ」と述べ、EUはフランスの農業を弱体化させていると批判した。