【3月3日 AFP】ギリシャで今週発生した同国史上最悪の列車事故は「起こるべくして起こった」もので、歴代政権の慢性的な失策を露呈していると関係者は指摘する。

 2月28日に中部ラリサ(Larissa)で起きた事故の原因は、駅長が線路のポイント切り替えを行わなかったためとされている。350人以上を乗せた旅客列車は貨物列車と正面衝突。これまでに57人の死亡が確認されている。

 過失致死罪に問われている駅長(59)は責任の一部を認めているが、弁護人は「木の背後には森がある」と語り、他にも要因があると主張した。

 国営放送ERTによると、駅長はわずか3か月の研修の後、40日前に着任したばかりだった。

■数十年にわたるずさんな管理

 山がちなギリシャの鉄道網は総延長2552キロと、それほど発達していない。だがギリシャ人の多くが鉄道よりも車やフェリーでの移動を好むのは偶然ではない。鉄道網は数十年にわたってずさんな管理や整備不良、老朽化といった問題を抱えているからだ。

 事故分析家のコンスタンティノス・ハシオティス(Konstantinos Hasiotis)氏によると、20年前に導入されたレーダ式の鉄道安全システムの設置は久しく遅れている。同氏はAFPに対し、「鉄道網の近代化を管理した全員が責任を負うべきだ」と述べた。

 鉄道運転士組合のコスタス・ゲニドウニアス(Kostas Genidounias)委員長は、安全上の欠陥をめぐる政治的責任を追及する証拠を近く公表すると語った。2000年以降、電子安全装置が作動していないため、列車制御は今も「手動」で行われているという。

 キリアコス・ミツォタキス(Kyriakos Mitsotakis)政権は、事故発生直後に駅長の過失を強調し、安全装置の不備については「慢性的な怠慢と失策」だとして過去の政権に押し付けた。今回の事故により、首相が続投を狙う4月の選挙では鉄道安全が争点の一つとなるとみられる。

■金融危機で安全崩壊

 今回の事故では民間鉄道事業者ヘレニック・トレイン(Hellenic Train)と、線路網を所有するギリシャ国鉄(OSE)、さらに政府の監視機関の3者間で管理責任の所在が混乱していることも明らかになった。鉄道規制機関や組合からは深刻な人員不足に対する批判も上がっている。

 コスタス・カラマンリス(Kostas Karamanlis)運輸相は、過去3年半にわたるミツォタキス政権の取り組みは「こうした事故を防ぐには十分ではなかった」と認め、事故発生から数時間後に辞任した。

 現地メディアは欧州鉄道交通管理システム(ERTMS)ギリシャ担当の元トップ、クリストス・カツイオウリス(Christos Katsioulis)氏の見解を報じている。同氏は2016年以降、インフラの改善が保留され完全でないと指摘し、時速200キロまで速度を上げる走行は危険だと警告している。

 OSEの顧問パナギオティス・テレザキス(Panagiotis Terezakis)氏は「2010年までは鉄道信号の近代化が進んでいたが、金融危機で安全システムが崩壊し始めた」と振り返る。

 ギリシャ北部の鉄道網を更新するための入札は今月末、開始される予定だった。(c)AFP/John HADOULIS / Helene COLLIOPOULOU