【3月12日 AFP】イラク南部の港湾都市バスラ(Basra)の薄暗いカフェで、たけり立ったおんどり2羽が薄汚れたカーペットを対峙(たいじ)しながら円を描くように歩く。狭い席に座った観客は、お茶をすすりながら2羽の闘いを見る。あたりはたばこと水たばこのにおいに満ちている。

 審判のリアド・アリさんによると、闘鶏の歴史は1920年代かそれ以前までさかのぼる。海外から持ち込まれたと考えられているという。

 動物虐待への懸念から、闘鶏は世界の多くの地域で禁止されている。だが、フィリピンからインドにかけてはありふれた光景であり、フランス北部などでも行われている。

 バスラでは数夜にわたり闘鶏が行われた。赤いとさかのおんどり2羽が、血のダンスを踊る。蹴ったりつつき合ったり。足や首に血の跡が残る。

 アリさんによると1試合は約1~2時間。おんどりが疲れたり、飼い主が退場させたりして終わる場合もある。

 カフェを訪れたナジ・ハムザさん(70)は、サダム・フセイン(Saddam Hussein)大統領の独裁政権下で禁止されていたにもかかわらず、1970年代から闘鶏に参加していた。「カフェや公共の場ではなく、人里離れた民家でやっていた」と語った。

 イスラム教は賭け事を禁止している。イスラム教徒が多数を占めるイラクでは、飼い主が賭けることが多いが、観覧客が参加することもある。賭け金は1試合あたり、2万5000~10万イラク・ディナール(約2300~9200円)に上る。

 飼い主のムハンマドさん(51)は「夕方にカフェに来て1、2時間過ごす。友達にも会える」「気晴らし、冬の娯楽だ」と話した。(c)AFP/Hussein Faleh