■「生きたまま墓場に埋められているようなもの」

 10歳の時、家族でヘラートに移住した。そこでも一家にハイダリさんを学校に行かせる余裕はなかった。授業料や教科書代を捻出するため、3年間家で夜な夜な伝統衣装を作った。2019年、両親を説得してヘラートの大学に入学し、ジャーナリズムを学び始めた。

「両親は私に完璧な主婦になってほしかった。でも、2人の姉のようにお見合い結婚はしたくなかった」

 イタリアにいても、アフガン女性の苦境を忘れたことは一度もない。「家に閉じ込められ、生きたまま墓場に埋められているようなものだ」と話す。

 ハイダリさんはアフガンの少数民族ハザラ(Hazara)人だ。イスラム教シーア派(Shiite)が多く、アフガンでは何世紀にもわたり迫害を受けてきた。現在はイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」の標的になっている。

 タリバンが復権するとハイダリさんは勤務先のツアー会社から標的になる恐れがあると警告を受け、アフガンから避難することを決意した。

 首都カブールの空港では、多くの人が逃げ出そうと必死だった。そこでの経験はトラウマになっている。

「タリバンはカラシニコフ銃を使って群衆をたたいた。銃弾が私の耳元を過ぎていった。横にいた一人の女の子が倒れ、死んだ。ホラー映画みたいと思ったけど、現実だった」

 米国とポーランド行きの飛行機には乗れなかったが、伊ローマ行きの便に乗ることができた。

 ハイダリさんは今でも、いつか帰国して「自分の旅行会社を立ち上げ、女性ガイドを雇う」ことを夢見ている。

 でも、「タリバンがアフガンにいる限り、そこは私のふるさとではない」と語った。(c)AFP/Brigitte HAGEMANN