【2月15日 AFP】ロシアがウクライナから連れ去った子ども6000人以上を再教育施設に収容し、「愛国教育」を施している疑いを指摘する報告書が15日、米国で公表された。戦争犯罪に当たる可能性があると懸念を表明している。

 報告書は米国務省の委託でエール大学(Yale University)人道研究所(Humanitarian Research Lab)がまとめた。それによれば、ロシアによる昨年の侵攻開始以降、ウクライナから多数の子どもがクリミア(Crimea)半島やシベリア(Siberia)などロシア全土に43か所ある施設に連行された。

 エール大のナサニエル・レイモンド(Nathaniel Raymond)研究員は記者会見で、ロシアは紛争時の文民保護について定めた1949年のジュネーブ条約に「明らかに違反している」と主張。ロシアの行為は「戦争犯罪や人道に対する罪に当たる可能性がある」と述べた。

 ロシア側は孤児の救済と医療サービスの提供が目的だと説明している。報告書によると、圧力を受けて子どもの移送に同意するか、いずれは帰国すると思って送り出す親もいる。

 ロシア当局は子どもに対し、学校での教育や校外学習、退役軍人の講演などを通じてロシアへの愛国心を植え付けようとしており、銃器を扱う訓練も施しているという。ただし、レイモンド氏によれば、子どもたちが戦場に送られていることを示す証拠はない。

 報告書は衛星画像やロシアの国営メディアの情報などを基に、施設に移送された子どもは少なくとも6000人に上ると推定。実際の人数はこれを「はるかに上回る可能性が高い」と指摘した。

 その上で、ロシアに対し、中立的な機関による収容所への立ち入りに加え、子どもたちの養子縁組を直ちに停止するよう求めている。(c)AFP