【2月5日 AFP】深刻な干ばつに見舞われるエチオピアで、遊牧民のモハメド・ハッサン・グレさん(32)は決断した──残った数少ないヤギを売り、村を出て新しい人生を探すことを。

 エチオピア東部で牧畜を営む多くの人と同様に、グレさんも干ばつの影響で家畜の大半を失い、遊牧民としての生活を諦めざるをえなくなった。

 家畜が死ぬのを見るのはもうたくさんだと話すグレさん。250頭いたヤギは、35頭にまで減った。

 ソマリア国境に接する東部ソマリ(Somali)州のこの村では、家畜の3分の2が死んだ。

 大陸東端「アフリカの角(Horn of Africa)」地域の遊牧民は、2年以上降らない雨を切望している。

 2020年末から雨不足の雨期が5回連続し、エチオピアやソマリア、ケニアは過去40年で最悪となる干ばつに見舞われている。

 国連(UN)によると、エチオピアだけでも干ばつで1200万人が「急性食料不安」に直面している。同国北部は、紛争にも見舞われている。

 国連人道問題調整事務所(OCHA)の1月18日の報告書によると、2021年以降、エチオピアでは家畜450万頭以上が死んだ。さらに3000万頭が危機的状況にあるという。

 グレさんの友人、ベレ・カルビ・ヌールさんは、家畜の9割を失った。だが、残った10頭ほどのヤギで生活を続けようとしている。

「遊牧する以外、どうしたら良いのかわからない」とヌールさん。「私は教育を受けていないし、農業も知らない。私が知っている唯一の生き方が遊牧だ」

 牧草は枯れ、井戸は干上がっている。こうした状況に置かれ、自給自足の生活を諦めて都市や避難民キャンプに移り、人道支援を頼りに生活を送る遊牧民は増え続けている。

 英NGOセーブ・ザ・チルドレン(Save the Children)のエチオピア東部マネジャーによると、ソマリ州の国内避難民(IDP)は約100万人に上る。2割は紛争、8割は干ばつを理由に避難していると説明した。(c)AFP/Simon VALMARY