【1月29日 AFP】健康な人間は何歳まで生きられるのか。世界最高齢のフランスの修道女リュシル・ランドン(Lucile Randon)さんが今月118歳で亡くなり、科学界で何百年も続いてきた論争が再燃している。

 ギネス世界記録(Guinness World Records)はランドンさんの死後、スペインの115歳の女性を世界最高齢に認定している。

 18世紀にフランスの博物学者、ビュフォン伯(Comte de Buffon)ことジョルジュルイ・ルクレール(Georges-Louis Leclerc)は、事故や病気と無縁なら人は理論上100歳まで生きられるとの説を唱えた。

 その後、医学の進歩や生活環境の改善で、寿命予測はさらに上がった。

 フランス人女性ジャンヌ・カルマン(Jeanne Calment)さんが1995年に120歳を迎えたことは、画期的な事例とされている。カルマンさんは2年後に122歳で亡くなった。確認されている限りでは、今でも世界史上最高齢と認定されている。

 国連(UN)によると、2021年の世界の100歳以上の高齢者「センテナリアン」は10年前より35万3000人増え、約59万3000人だった。

 ドイツの市場調査会社「スタティスタ(Statista)」は、この数は今後10年で2倍以上になると予測している。

 今のところ、人は最長何歳まで生きられるのだろうか。

 2016年に英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された遺伝学の論文では、1990年代後半以降、人間の寿命は伸びていないと結論づけられた。世界の人口統計を分析したところ、カルマンさんの死後、世界の高齢人口は拡大したものの、人の最長寿命はむしろ短くなっているという。

 フランスの人口統計学者・老年学者のジャンマリ・ロビヌ(Jean-Marie Robine)氏はAFPに対し、この論文について「人の寿命には自然な限界があり、最長寿命は115歳前後と結論付けている」とした上で、「この仮説に一部異議を唱える人口統計学者も多い」と述べた。

 2018年の研究では、死亡率は年齢とともに上昇するが、85歳を過ぎると緩やかになり、107歳前後では1年ごとの死亡率は最大で50~60%となることが分かった。

「この理論では、110歳の人が12人いると、6人が111歳まで生き、3人が112歳まで生きるといった計算になる」とロビヌ氏は説明した。