■「最悪の事態も覚悟」

 ロシアでは昨年以降、LGBTなど性的少数者を支援する著名な団体や活動家の多くが「外国の代理人」に指定されるなど、性的少数者への圧力が強まっている。こうした動きは、同国がウクライナに侵攻した2月以降に加速し、政府の見解に沿わない言論が存在する余地はほぼ消滅した。

 新たな法案では当初、成人向けの「LGBTプロパガンダ」に対して40万ルーブル(約90万円)の罰金を科すことが提案されていた。だが議会は間もなく、罰則を2年の懲役刑に引き上げる修正案を可決する見通しだ。

 モスクワのショー出演者たちは、迫りくる新法の脅威を前に、今を生きようとしている。

 スキニー・ジェニーさんは「私たちはまだ生きていて、人々に幸せを届けている」とほほ笑んだ。そばでは、出演者たちが互いのコルセットを締め、化粧の仕上げをしていた。

 メイ・ハントさんは、笑い声と音楽に包まれた部屋を指さしながら「これが本当に、今ロシアが持つ最大の問題なの?」と問い掛けた。

「最善を望んでいるが、最悪の事態も覚悟している」と語ったメイ・ハントさん。ショーが禁止された場合にどうするかはすでに考えている。「地下に潜って、さらに伝説的な存在になればいいの!」 (c)AFP