【11月22日 AFP】1700年前の先コロンブス期のメキシコで、外交的な絆を深めるため雌のクモザルが贈られていたとする論文が21日、「米科学アカデミー紀要(National Academy of Sciences)」に掲載された。

 クモザルはマヤ(Maya)の高官からテオティワカン(Teotihuacan)に贈られたもので、1970年代の米中国交正常化時の「パンダ外交」に相当するとしている。

 論文の筆頭著者であるカリフォルニア大学リバーサイド校(University of California, Riverside)のナワ・スギヤマ(Nawa Sugiyama)氏は2018年、メキシコの首都メキシコ市の北東48キロに位置するテオティワカン遺跡で、本来は生息しないクモザルの骨を発見した。同遺跡は国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)の世界遺産(World Heritage)に登録されている。

 クモザルは5~8歳ごろに生きたまま埋められ、いけにえとされた可能性が高い。研究は、クモザルの骨がなぜこの地にあるのか、誰が連れてきたのか、なぜいけにえにされたのかといった疑問から始まった。

 骨が見つかった「石柱の広場(Plaza of the Columns)」は、現代で言えば大使館に当たる場所で、マヤの代表機関が置かれていた。

 クモザルの骨は、黒曜石や巻き貝の殻、貴石など貴重な品々と共に発見された。国鳥イヌワシの骨も見つかった。スギヤマ氏は、高官レベルでの交流が行われていた証拠だとしている。

 さらに、別々の時期に生えたクモザルの犬歯2本を化学分析したところ、捕獲される前は多湿な環境で、植物や植物の根を食べていたことが分かった。テオティワカンに連れて来られた後は、トウモロコシやトウガラシなど人間の食べ物に近いものが与えられていたようだ。

 クモザルは「標高の高いテオティワカンには生息しない、珍奇な生き物」として扱われていた可能性があるという。

 クモザルは「後ろ手に縛られ、両足も拘束された」状態だった。この姿勢は、テオティワカンでいけにえにされた人間や動物によく見られる。

 スギヤマ氏は、現代人は残酷に思うかもしれないが、「文化的慣行や、自分にとって一番大切なものをささげるということがどういう意味を持つかを理解し、文脈を考える必要がある」としている。(c)AFP/Issam AHMED