【11月16日 AFP】イタリア右派連立政権の保健政務次官が15日、新型コロナウイルスワクチンについて、実際に効果があったとする証拠はないと発言し、物議を醸している。

 マルチェロ・ジェンマート(Marcello Gemmato)保健政務次官は、国営イタリア放送協会(RAI)の番組に出演。ワクチンがなかったら新型コロナ関連の死者はもっと多かったのではないかとの質問に「われわれに証明責任はない」と答えた。

 ジェンマート氏はまた、「ワクチンについてうかつに賛否を表明することはしない」としながら、新型コロナ危機に対するマリオ・ドラギ(Mario Draghi)前政権の「非現実的な」アプローチを批判した。

 ジェンマート氏は、ジョルジャ・メローニ(Giorgia Meloni)新首相率いる極右政党「イタリアの同胞(FDI)」に所属。薬剤師の資格を持ち、国内のほとんどの公共の場で提示を求められるワクチン接種証明「グリーンパス」に反対してきた経緯がある。

 ジェンマート氏の発言を受け、中道左派「民主党」のエンリコ・レッタ(Enrico Letta)書記長(党首)らから辞任を求める声が上がった。中道派「アツィオーネ」を率いるカルロ・カレンダ(Carlo Calenda)氏は、「ワクチン反対派と距離を置かないような保健政務次官は間違いなく不適任だ」とツイッター(Twitter)に投稿した。

 主要都市ジェノバ(Genoa)にあるサンマルティーノ(San Martino)診療所の感染症専門家マッテオ・バッセッティ(Matteo Bassetti)氏は「ワクチンが何百万人もの命を救うのに役立ったことについて科学的根拠がないとなぜ言えるのか。科学論文を読めば分かることだ」とツイートした。

 イタリアは2020年初めに欧州で初めて新型コロナが大流行した国で、厳格な規制を実施してきた。10日現在、新型コロナの死者は約18万人となっている。(c)AFP