【10月29日 AFP】米ケンタッキー州に実物大をうたう「ノアの箱舟(Noah's Ark)」を再現したテーマパークがある。進化論を偽りとする世界観を主張し、全米から天地創造説の信者が訪れている。

 テーマパーク「アーク・エンカウンター(Ark Encounter、箱舟との遭遇の意)」とその関連施設「創造博物館(Creation Museum)」では、紀元前4000年ごろに神が文字通り6日間で天地を創造したとの信念が全面に押し出されている。

 キリスト教福音派の信者らは、約6500万年前の恐竜の絶滅といった科学的事実に鋭く反論する壮観な展示を目当てにここへやって来る。

「進化論者は恐竜を利用して自分たちの世界観を誇示します。ですから、われわれはその恐竜を、言うなれば取り返しているのです」と、アーク・エンカウンターおよび創造博物館の共同設立者マーク・ルーイ(Mark Looy)氏は語る。

 同氏は肉食恐竜アロサウルスの骨格標本の横に立ち、ここでは恐竜について異なる見解を提示していると話した。「その大半は約4500年前、ノアの洪水で絶滅したのです」

■「ただの物語ではない」

 創造博物館は2007年にケンタッキー州ピーターズバーグ(Petersburg)に開館した。資金は天地創造説を確固として信じる団体「アンサーズ・イン・ジェネシス(Answers in Genesis、答えは創世記にあるの意)」の募金活動と支援で賄われた。

 2016年には、そこから約70キロ離れたウィリアムズタウンにアーク・エンカウンターがオープン。ノアの箱舟のレプリカは、聖書に記載されている通り全長150メートル、高さ15メートル、幅25メートルの大きさだ。

 ジョージア州アトランタ(Atlanta)から見学に訪れた企業幹部のスザンヌ・スウィンドルさん(37)は「私も夫も(中略)世界が約6000年前にできたと信じています」と述べ、聖書が「ただの物語ではないこと」を見せるために娘を連れて来たと話した。

 米世論調査会社ギャラップ(Gallup)が2019年に行った調査によると、米国人の40%は、神が人間を創造したのは今から1万年前にも満たない数千年前の出来事だと考えている。

 米国における天地創造説を扱った「Creationism USA」の著者で、ニューヨーク州立大学ビンガムトン校(Binghamton University, State University of New York)の歴史学者アダム・ラーツ(Adam Laats)氏は、米国で創造論者を自称することは、むしろ「より広い文化的分断における識別子」になると指摘する。

「例えば、『私は創造論者と言えると思います。なぜならポルノグラフィーが嫌いだし、人工妊娠中絶の権利やLGBTQ(性的少数者)の権利を認めたくないからです』といった具合です」