【10月13日 AFP】世界の滅亡は一つのフットボールから始まるかもしれない──。米大統領がどこに行くにも常に共に移動する書類かばんが「核のフットボール」と呼ばれているからだ。

 ぎこちないほどに膨らんだこの黒いかばんは、さほど重要そうには見えない。その重要性を示唆するものは、軍服を着た側近が常に持ち歩いていることだけだ。

 かばんの中には大統領が世界のあらゆる場所から、核攻撃を許可するために必要な極秘のコードと計画、そしてあらかじめ選定された標的を並べたメニュー表のようなものが入っている。

 ホワイトハウス(White House)には、大統領が開戦を命じ、軍司令官らと交信できる緊急対応室(Situation Room)が用意されている。

 だが例えば、来月ジョー・バイデン(Joe Biden)大統領が数日の間にプエルトリコをはじめフロリダ、ニューヨーク、ニュージャージー、メリーランド各州を訪問する時には、いつもそうであるように「フットボール」と共に移動する。

 バイデン氏いわく、ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領がウクライナに対して核兵器の使用を示唆することは、すなわち世界に対して「ハルマゲドン(Armageddon、世界最終戦争)」の脅しをかけることである。

 もし米国が反撃を行うならば、大統領は専用車「ザ・ビースト(The Beast)」からでも、専用機「エアフォースワン(Air Force One)」からでも、秘密の地下壕(ごう)からでも命令を出すことができる。つまり、「フットボール」と大統領が一緒ならば、どこからでも可能だということだ。

■ビスケット

 ただし核戦争を始めるには、「フットボール」よりも地味で、無害そうな愛称が付けられたもう一つのカギが必要になる。「ビスケット」と呼ばれている、クレジットカードほどの大きさのカードだ。

「フットボール」に戦争計画のメニューが入っているとするならば、「ビスケット」には「金のコード(Gold Codes)」と呼ばれる、大統領が身分証明を行い、命令を出すためのコードが記されている。

「ビスケット」は大統領が常時携帯することになっており、「フットボール」と共に重要機密扱いで、厳重に守られているが、過去には紛失騒ぎなどもあった。