【8月30日 AFP】イラクの首都バグダッドで29日、イスラム教シーア派(Shiite)指導者ムクタダ・サドル(Moqtada Sadr)師が政界からの引退を表明したことを受け、サドル師の支持者が政府庁舎に突入するなどの騒乱が発生し、12人が死亡した。同国軍は、全土に夜間外出禁止令を出した。

 かつて武装勢力を率いて米軍やイラク政府軍に対抗したサドル師は、熱狂的な支持者を多く持つが、これまで政権を獲得したことはない。昨年10月の総選挙では、サドル師派が最多の議席を獲得したものの過半数には及ばず、以来、連立政権樹立をめぐるシーア派諸派の対立により政局が混乱している。

 サドル師はツイッター(Twitter)への投稿で「私は政治に干渉しないことを決断した。今、完全な引退を発表する」と表明。同師の支持者はその直後、政府の主要機関や議会などがあり厳重な警備が敷かれているグリーンゾーン(Green Zone)に押し寄せ、閣議が開かれる共和国宮殿(Republican Palace)に突入した。

 AFP特派員によると、グリーンゾーンでは発砲が発生。目撃者は、サドル師派と、対立する親イランのシーア派連合「調整枠組み(Coordination Framework)」の支持者が銃撃戦を繰り広げたと語った。

 医療関係者はAFPに対し、サドル師支持者12人が撃たれ死亡、270人が負傷したと説明。保安筋によれば、グリーンゾーンの入り口では警備隊がサドル師派を解散させるために催涙ガスを使用した。

 騒乱はその後、他の地域にも拡大。AFP特派員や目撃者によると、南部のナシリヤ(Nasiriyah)やヒラー(Hillah)でもサドル師支持者が政府庁舎に突入し、ヒラーでは一部の道路が封鎖された。

 イラク軍は、全土を対象に午後7時(日本時間30日午前1時)以降の外出禁止令を発表。バグダッド市内ではすでに外出禁止令が出されていたが、デモ隊はこれを無視していた。(c)AFP