■知らない間に…

 だが今、モーテンセンさんは臆しながらも主にフェイスブック(Facebook)を通じて、その出来事を語る会に参加している。同じくIUDを強制的に装着された経験を持つ心理学者のナジャ・リベルト(Naja Lyberth)氏が立ち上げたこのグループには、70人以上が集まっている。

 リベルト氏は「同じ体験をしてきた女性同士の相互支援グループなので、とりわけ長年にわたって抑え込んできたトラウマがよみがえったときも、孤独ではありません」と説明する。

 子どもが欲しくても持てなかった女性にとっては、特に過酷なトラウマだ。

 リベルト氏によると、多くの女性は避妊具を装着されていたことを知らず、グリーンランドの婦人科医らが見つけて初めて知ったという。

「一般的なのは、中絶手術の際に本人には知らせずに装着していたケースです」とリベルト氏は話した。

 コペンハーゲン大学(University of Copenhagen)准教授で歴史家のソーレン・ルド(Soren Rud)氏によると、この政策は1953年にグリーンランドが海外領に昇格した後も、植民地主義の名残として、1960年代終わりにデンマーク政府によって推進された。

 ルド氏は、デンマークのこの政策には「グリーンランドの人々は文化的に劣っているという考えが表れています。他の多くの避妊法と違って、IUDは装着するだけで効果があり、グリーンランドの女性たちの労力を必要としなかったからです」と語る。

 グリーンランドは2009年に自治領となり、デンマークとの過去の関係について見直しが行われている。

 デンマークは1950年代、北極圏でデンマーク語を話すエリートを育てるという社会実験のために、家族から強制的に引き離したイヌイット6人に対し、今年3月に謝罪し、損害賠償を支払った。

 モーテンセンさんは、強制的に避妊具を装着させられた女性にも謝罪と補償があるべきだと考えている。「IUD装着を強制された多くの少女、私たち被害者に対して補償すべきです」 (c)AFP/Camille BAS-WOHLERT