【6月3日 AFP】ウクライナの首都キーウにある小さな整形外科医院で、ダビティ・スレイマニシビリ(Daviti Suleimanishvili)さんは、南東部マリウポリ(Mariupol)の戦闘で失った左脚の代わりとなる義足のさまざまな選択肢について医師から説明を受けていた。

 ジョージア生まれでウクライナの市民権を持つスレイマニシビリさんは、ロシアとの戦闘で腕や脚を失い、義肢の入手を心待ちにしている無数の負傷者の一人だ。

 スレイマニシビリさんはアゾフ連隊(Azov Regiment)の戦闘員で、ロシア軍から3か月にわたって激しい攻撃を受けたマリウポリを拠点にしていた。市内のアゾフスターリ(Azovstal)製鉄所に立てこもっていた最後の部隊は先月ついに投降した。

 スレイマニシビリさんは3月20日、900メートル先に展開していたロシア軍の戦車から攻撃を受けて負傷した。

「爆発の衝撃で4メートル吹き飛ばされた私の上に、壁が落ちてきた」と、スレイマニシビリさんはAFPに語った。榴散(りゅうさん)弾も浴びたという。「立ち上がろうとして、片脚の感覚がないのに気付いた。手も負傷しており、指が1本なくなっていた」

 製鉄所の広い構内に設けられた野戦病院に運び込まれたスレイマニシビリさんは、片膝のすぐ下を切断する手術を受けた。その後、中部ドニプロ(Dnipro)にある病院までヘリコプターで搬送された。

 2か月後、松葉づえを突いて動き回れるようになったスレイマニシビリさんは、義足を装着できる日が待ち切れない。費用を負担するのは政府だ。

「可能ならば、軍に残って戦闘を続けたい」と語るスレイマニシビリさん。「片脚なんて何でもない。今は21世紀だ。良い義肢があるし、生きて従軍し続けることができる。この戦争では今や大勢が義肢を着けて前線に立っているのを私は知っている」

 ウォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領は4月中旬、負傷兵は1万人に上ると発表した。また国連(UN)によると、民間人の負傷者も4600人を超えている。

 スレイマニシビリさんが訪れた医院のオレクサンドル・ステツェンコ(Oleksandr Stetsenko)院長の話では、国内の義肢製作施設は約30か所。同院では通常、年におよそ300の義肢を作るという。ただし、義肢は患者のけがの状態やニーズに合わせた特注品で、製作数を増やすのは難しい。

 砲手だというスレイマニシビリさんは、「ほぼ全ての操作を自分でできる義足が欲しい」と希望しており、大型兵器の操作にも耐えられるよう、義足の重さを15キロ上乗せする予定だ。1週間後に再来院して仮の義足を装着し、歩行訓練を開始する。

「2~3週間もすれば走っているだろう」と語った別の医師によると、スレイマニシビリさんのように手や足を切断した兵士の「9割」が、戦地への一刻も早い復帰を望んでいるという。(c)AFP/Charlotte PLANTIVE