【5月28日 AFP】今年11~12月に開催されるサッカーW杯カタール大会(2022 World Cup)。現地で観戦しようと世界中から約140万人が集まるとみられており、熱狂的な各国のサッカーファンと保守的なカタール国民とのカルチャーショックを和らげる目的で、異星人を主人公とする短編アニメーションシリーズが製作された。

 カタール初のアニメーションスタジオ「ネファイシュ・アニメーション(Nefaish Animation)」が手掛けた作品のタイトルは、アラビア語で「惑星人」を意味する「カウカバニ(Kawkabani)」。エピソードは各10分で、第1シリーズ全5話のうち、すでに第4話までがユーチューブ(YouTube)で公開され、英語、フランス語、スペイン語、ヒンズー語、中国語、日本語の6言語で視聴できる。

 主人公は、首都ドーハに不時着したという設定の異星人カウカバニ。国外から来るサッカーファン同様、アラビア語の発音やカタール文化を学ばなければならない。

 例えば、保守的なカタール人の好む飲み物といえば風味豊かなコーヒーやフルーツジュースだが、欧州のサッカーファンは路上でビール片手に盛り上がることがよく知られている。

「カタールの人々に、そうした(外国の)文化を受け入れる必要があることを説明し(中略)、訪れるファンにもカタール文化を理解してもらえるようにしたい」と、脚本を担当したアマル・シャマリ(Amal al-Shammari)氏は語る。

 小国カタールにとって、W杯の開催は自国の習慣や独自性をアピールする機会となる。

 作品には異星人カウカバニの他、3人の主要なカタール人キャラクターが登場する。

 1人目は、かつては砂漠に住んでいた遊牧民ベドウィン(Bedouin)出身のファイサル。「自分たちの文化に誇りを持ち、時に過剰反応する」が、「何があっても味方になってくれる」キャラクターだとシャマリ氏は説明する。

 2人目はより現代的な都会っ子のサード。異文化にオープンで、人に心を開き、実業家志望のキャラクターだ。

 3人目は多様化が進みつつあるカタール社会を象徴するハリファ。ビーガン(完全菜食主義者)で、母親は英国人、父親がカタール人だ。

 ネファイシュ・アニメーション共同創設者でクリエーターのホセイン・ヘイダル(Hossein Heydar)氏は、「(アラブには)歴史的にさまざまな物語があり、いろいろな登場人物や英雄がいます。そのことをカタールから、そしてアラブ地域から世界中に紹介したいと思っています」と話した。

 シャマリ氏とヘイダル氏は「カウカバニ」をさらに2シリーズと、アラブ文化をテーマにしたプロジェクトを計画している。

  映像は「カウカバニ」第1シリーズ第1話の一部と、脚本を担当したシャマリ氏へのインタビュー。インタビューは7日撮影。(c)AFP/Anne Levasseur and Raphaelle Peltier