【4月14日 AFP】香港のテレビ局TVBが放送中のシリーズ物のサスペンススリラードラマ「金宵大廈2(Barrack O'Karma 1968)」で、フィリピン人家政婦を演じたカナダ系香港人女優が肌を褐色に塗っていたことから、いわゆる「黒塗り」だとして物議を醸している。

 ドラマに登場した黄婉華(Franchesca Wong)さんの肌の色は、見るからに濃かった。さらに黄さんは、共演者がインスタグラム(Instagram)に投稿した動画で、脚に茶色の化粧を施している様子を披露。フィリピンなまりを交えて「私は別人に変身中」「今、日焼けをしているところ」などと語っていた。

 地元メディアではドラマはおおむね好評で、人種差別に関する議論を採り上げている媒体はない。だが、「黒塗り」や配役そのものをめぐってフィリピン系住民を中心に批判が巻き起こった。

 中国系フィリピン人の元女優で現在は香港でモデルをしているサブリナ・マン(Sabrina Man)さんは、「役を演じるために肌を黒くしなければならなかったのは適切ではないと思う」「家事労働者に対しても、フィリピン人全般に対しても失礼だ」と非難した。

 香港生まれのフィリピン人ライター、ジャニー・ソリアーノ(Jianne Soriano)さんも、香港にはこの役柄を演じられるフィリピン人女優が何人もいると指摘する。

 香港で働く外国人家事労働者は約34万人。大半がフィリピンやインドネシアから来た女性だ。週6日働いて、最低月給は4630香港ドル(約7万4000円)。世界一部屋が狭いともいわれる香港で、雇い主の家に住み込みで働くのが原則だ。

 国際移民連合(IMA)のエニ・レスタリ(Eni Lestari)会長は「金宵大廈2」の演出について、もともと差別を受けている家事労働者に対する「侮辱」だとし、「文化には、その地域社会における生活上の経済的・政治的な不平等が表れる」と述べた。

 黄さんは14日時点で取材に応じていない。

 TVBは肌の色を濃く塗ったことについて直接言及はせず、「どの番組においても、あらゆる国籍に対して侮辱や差別をする意図は全くない」と回答した。(c)AFP/Jerome Taylor and Su Xinqi